荷風マインドに触れる

今月買った本

綿矢 りさ 作家
エンタメ 読書 芥川賞

 昔の小説に出てくるお店をネットで検索して、いまでも存在してるか調べる遊びが最近好きだ。永井荷風の『断腸亭日乗』を読むにあたり、荷風行きつけの料理店などを検索してみた。荷風は自炊しないタイプで外食が多く、亡くなる間際も大好きだった市川の大黒家のカツ丼をよく食べていたというが、惜しくも2017年に閉業していた。この日記は書かれた年代は古いが、内容は街ブラにカフェ、ショッピングといった、銀座や浅草を目指して出歩くのが好きな荷風の毎日を記した日記で、読むとワクワクする。

 荷風行きつけのそば屋、尾張屋本店は営業していたので行ってみた。活気のある店内で天ぷらそばは美味しかったが、それ以上に店内に飾ってある、写真嫌いの荷風を無理やり撮ったという、隠し撮り風味の写真が気になってしょうがなかった。帽子も脱がずにそばを食べている最中でぎょっとした表情をカメラに向けている。他にも行きつけの「どぜう飯田屋」にも行ってみた。立派な店構えでちょっと恐縮していたのだが、店員さんが注文を取る際まず「お酒は飲まれますか?」と親しげに訊いてきて(まだ昼間だったのだが)周りのお客さんも食べる前に呑んでる人が多く、荷風はこの店のこんな雰囲気が好きだったのかなと思った。天ぷらそばも柳川鍋も共通して、しっかり濃いめの甘い味つけで、荷風の味の好みに触れられた気がした。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から

  • 1カ月プラン

    新規登録は50%オフ

    初月は1,200

    600円 / 月(税込)

    ※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。

  • オススメ

    1年プラン

    新規登録は50%オフ

    900円 / 月

    450円 / 月(税込)

    初回特別価格5,400円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。

    特典付き
  • 雑誌セットプラン

    申込み月の発売号から
    12冊を宅配

    1,000円 / 月(税込)

    12,000円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります
    雑誌配送に関する注意事項

    特典付き 雑誌『文藝春秋』の書影

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2022年9月号

genre : エンタメ 読書 芥川賞