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★防衛費をめぐる攻防
年末の予算編成にむけて、財務省の動きが慌ただしくなってきた。なかでも注目は防衛費をめぐる自民党議員との交渉である。
「国内総生産(GDP)比2%」を突きつけられた財務省は、6月の幹部人事から参院選と内閣改造を見据えたシフトを敷いてきた。
主計局長に就いた新川浩嗣氏(昭和62年、旧大蔵省入省)は、2%論の先頭に立ってきた安倍晋三元首相の秘書官。新川氏の下で防衛予算を直接、担当することとなる寺岡光博主計局次長(平成3年)は菅義偉前首相の秘書官だ。財務省としては、この布陣で「安倍・菅」の旧官邸一強コンビを攻略する狙いがあった。
ところが安倍氏は参院選の投開票日直前に不慮の死をとげる。最終的に安倍氏への根回しで保守派を抑え込み、軟着陸させようとの思惑は早くも崩れてしまった。
安倍氏なき自民党との折衝で難敵とみられるのは、「安倍氏の思いを受け継ぐ」と公言する萩生田光一政調会長と高市早苗経済安全保障担当大臣。萩生田、高市両氏とも旧統一教会との関係で矢面に立っており、それだけに勝負所となる防衛費では譲れない。萩生田氏は就任直後の会見の冒頭からいきなり「防衛力の強化」を訴えた。
高市氏については、地元選挙区の奈良つながりで、茶谷栄治事務次官(昭和61年)の役割が重要になる。奈良県随一の進学校東大寺学園出身の茶谷氏に、高市氏は親近感を抱いているからだ。
財務省は、首相官邸にいる宇波弘貴首相秘書官(平成元年)に加え、財政再建論者だった与謝野馨氏の秘書官を長く務めた嶋田隆政務秘書官(昭和57年、旧通産省)も味方に数える。安倍氏不在の中、防衛費問題は「財務系官僚vs.保守派政治家」の様相が色濃くなってきた。
事態を収拾するには、やはり岸田文雄首相本人が動くしかあるまい。
★録音を警戒する副長官
内閣改造後、閣僚や党幹部に旧統一教会との関係が次々発覚し、内閣支持率が低下する岸田政権。その批判の矛先は栗生俊一官房副長官(昭和56年、警察庁)に向いている。警察出身にもかかわらず、「身体検査が甘すぎた」(自民党三役経験者)というのだ。
官邸の要であるはずの栗生氏だが、霞が関における評判もよろしくない。
栗生氏は各省庁の事務次官や局長らと打ち合わせする際、携帯電話を部屋の入口で預かることがあるという。録音を警戒するためだが、「相談や打ち合わせに来た次官たちが信用されていないと感じ、心を閉ざす」(官邸筋)。
官房副長官は各省庁の事務次官の相談相手でもある。重要な人事を決める時には、内閣人事局長でもある副長官とすり合わせることは、前任の杉田和博氏(41年)からの引継ぎ事項だが、栗生氏の就任時から次のような声が上がっていた。
「各省庁の次官よりはるかに歳上の杉田氏は人柄に温かみがあり、どんな問題でも遠慮なく相談できた。年次が近い栗生氏は次官たちとの人間関係をつくるのに苦労するだろう」(次官経験者)
省庁サイドからすれば、重要人事で岸田首相の意向を探るルートは栗生氏だけではない。「栗生氏に逆らえば、人事で嫌がらせをされるため、今は言うことを聞いているだけ」(同)という見方もある。
このまま栗生氏が自らの流儀に固執すれば、交代時期も早まるかもしれない。
★出世のための新条件
政府は、滝崎成樹内閣官房副長官補・国家安全保障局次長(昭和60年、外務省)の後任に、岡野正敬総合外交政策局長(62年)を起用する。優しそうな外見とは裏腹に胆力と統率力がある岡野氏への岸田官邸の期待は大きい。
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