外務省・財務省「連係プレー」、経産省人事の「その次」、警察庁“粛清”の裏で…

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★官邸内の連係プレー

 年末に本番を迎える防衛費増額と安全保障三文書の改定に向けた有識者会議の第1回会合が首相官邸で開かれた。

 首相官邸に有識者会議を設けるのは外務省と財務省の連係プレーといってよい。

 難題が山積する議論をリードするため、秋葉剛男国家安全保障局長(昭和57年、外務省入省)が財務省の茶谷栄治事務次官(61年、旧大蔵省)と手を握った。

 官邸には岡野正敬官房副長官補(62年、外務省)が控え、財務省は藤井健志官房副長官補(60年、旧大蔵省)を置くなど万全の体制を敷く。

 実務面でもエース級を投入する。財務省は新川浩嗣主計局長(62年)を筆頭に、防衛担当で菅義偉首相秘書官も務めた寺岡光博主計局筆頭次長(平成3年)がスタンバイする。加えて「10年に1度の逸材」と評判の一松旬企画担当主計官(7年)までそろえる強力布陣だ。

「GDP比2%」防衛費の実現には、予算枠組みの組み替えから財源の手当てまで、膨大な作業が必要で、「オール財務省」が一丸となっている。

 年末、有識者会議の提言書には「防衛費増額の恒久財源を検討する」との一文が盛り込まれる予定だ。「恒久財源」は、法人税、金融所得課税、たばこ税増税が想定される。

 劣勢なのが防衛省だ。官邸にいる髙橋憲一官房副長官補(昭和58年、旧防衛庁)は「秋葉・財務省ライン」に対抗するには迫力不足だ。

 安倍氏の首相秘書官だった島田和久前防衛次官(60年)は現在、官邸で内閣官房参与だが、内閣参与はいわば「飾り」の棚上げポストで実務には携われない。

 防衛省は萩生田光一政調会長の剛腕に期待をかけるものの、旧統一教会問題で足をとられる萩生田氏にどこまで期待できるか、予断を許さない。

 防衛論争の第一ラウンドは、陣立てから外務省と財務省の連合軍が制した形となった。

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 萩生田氏

★出遅れた少子化対策

 今夏以降に霞が関でしばしば耳にするのが「三兄弟」のフレーズ。岸田文雄首相が打ち上げた「防衛費増額」「GX移行債」「少子化対策」のことで、いずれも“強大な”財源確保策が避けられないことから名付けられた。優先度には差があり、出遅れ気味なのが少子化分野だ。

 少子化対策は岸田政権下の早い時期から動き出した。今年1月1日付で山崎史郎氏(昭和53年、旧厚生省)を全世代型社会保障構築本部の総括事務局長に起用。介護保険創設の立役者であり、嶋田隆首相秘書官(57年、旧通産省)とも気脈を通じる山崎氏は、急ピッチで進む人口減の対策として子育て給付拡充を主張。非正規雇用者・フリーランスらも育休給付対象に加えるべきだとする。

 事務局には菅前首相に長年仕えた鹿沼均氏(平成2年、旧厚生省)が審議官で着任。実務体制も整え、「子育て予算倍増」を鼻息荒く公言してきた首相だが、故安倍晋三元首相や米国の圧力で防衛予算増額に迫られ、少子化対策は「来年に道筋を示す」とトーンダウンした。

 来年度から出産費用に充てられる「出産育児一時金」(42万円)を増額する方針だが、過去を振り返れば、一時金の増額を追いかけ出産にかかる医療機関の価格設定は上昇した。「今回も同じ轍を踏む。少子化対策の実効性には乏しい」(厚労省幹部)と冷めた声が相次ぐゆえんだ。

 岸田政権は国葬実施や旧統一教会と自民党との密接な関係が世論の離反を招き、「政権末期的」(自民党筋)な様相を呈する。「三兄弟」の取り扱いさえ覚束ない有様に「何もやっていない政権なのに、何もできない状態になってきた」(経済官庁幹部)。

 霞が関に漂う失望感は深い。

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source : 文藝春秋 2022年11月号

genre : ニュース 政治