三谷さんと善児と出会うまで

巻頭随筆

梶原 善 俳優
エンタメ 芸能 テレビ・ラジオ

「善、大変なことになっているよ!」

 NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の放送後、三谷幸喜さんからそんなメールが届いた。僕が演じた善児が、SNSで話題になっているとか。驚きつつも人を殺めている身なもんで「ええっそうなんですか、でもそんなに盛り上がられても……」と、そっけなく返事をしたと思う。

 善児を演じるにあたり三谷さんからの注文は「殺気がなく、とても殺し屋にみえないけど、いざとなったら殺気みなぎる感じ」。善児にとっては、庭の草むしりも人を殺めることも同じテンションで「へえ」と、仕事を淡々と実行する。出番を重ねるうちに、三谷さんから「とうとうトレンド1位になっちゃったよ!」と、またメールが届く。「事を成すごとにトレンド入り、恐ろしや」と返事をした。

 実は第5話の台本を読んだときは愕然とした。義時の兄の宗時を手にかける事に、「ええ宗時兄ちゃんを俺がぁー……」。宗時は北条家を盛り立ててよく頑張っていたのに。片岡愛之助さんのお芝居も前へ前へ向かって行く感じが大好きだったから、まさか善児が! 当の善の方は本当にショックだった。撮影現場で共演者の方に久しぶりに会えるのは凄く嬉しい。が、今回ばかりはそうも言っていられない。善児との出会いは即ち別れ、殺められてしまう……。撮影が終わるごとに本当に亡くなったわけではないが共演者の冥福を祈った。

(写真はイメージ) ©iStock.com

 全ての撮影が終わって数日は善児が体から離れなかった。白状すると、ちょっと寂しかったのかもしれない。もっとも共演者の山本耕史くんは「善児が抜けないのはマズいですね。早く抜いて下さい」と心配してくれたが。そのあと善児はふらーっとどっかへ行ってしまった――。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から

  • 1カ月プラン

    新規登録は50%オフ

    初月は1,200

    600円 / 月(税込)

    ※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。

  • オススメ

    1年プラン

    新規登録は50%オフ

    900円 / 月

    450円 / 月(税込)

    初回特別価格5,400円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。

    特典付き
  • 雑誌セットプラン

    申込み月の発売号から
    12冊を宅配

    1,000円 / 月(税込)

    12,000円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります
    雑誌配送に関する注意事項

    特典付き 雑誌『文藝春秋』の書影

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2022年10月号

genre : エンタメ 芸能 テレビ・ラジオ