作家・内田康夫(うちだやすお)は、浅見光彦が活躍する旅情あふれるミステリーを書き続けて、多くのファンを楽しませた。
友人に薦められて読んだ推理小説をけなしたところ、「書けないくせに」といわれた。そこで最初の作品『死者の木霊』を書いて江戸川乱歩賞に応募してみたが落選。自費出版すると意外にも評判になって、乱歩賞の事務局がある出版社の重役に「なぜ乱歩賞に応募しなかったんですか」と聞かれたという。
1934(昭和9)年、東京に生まれる。父親は医師だった。埼玉県立川越高校を卒業して東洋大学文学部に入学するが中退。アニメ制作に携わり、コピーライターをへて広告制作会社を経営していた。「作家になろうなんて、思ったこともなかった」。
第1作が注目されたことで注文がくるようになり、第3作目にあたる82年刊の『後鳥羽伝説殺人事件』で、初めてルポライターの浅見光彦を登場させる。「刑事を主人公にしていましたが、途中で気が変わって切り替えた。続ける気はなかったんです」。
しかし浅見光彦が活躍する作品はシリーズ化して繰り返しテレビドラマ化された。日本テレビでは水谷豊、TBSでは辰巳琢郎と沢村一樹、フジテレビでは榎木孝明と中村俊介などが光彦役を務めた。
また、91(平成3)年、市川崑監督によって榎木孝明主演の『天河伝説殺人事件』が映画化されて評判になり、第2弾も計画されていたが、映画会社の内部事情により中止に至ったといわれる。
たいがいは前もって構想を立てることなく書き進んだので、意外な展開となって自分自身が驚くこともあった。浅見光彦シリーズが多くのファンを獲得したことについては、「『水戸黄門』と『寅さん』のふたつが入っているから」と語ったことがある。
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source : 文藝春秋 2018年05月号