アニメ監督の高畑勲(たかはたいさお)は、アニメーションの新しい表現を追求し、情感あふれる独自の世界を作り上げた。
1991(平成3)年公開の『おもひでぽろぽろ』は不思議な作品だった。派手な事件は起こらないが、少女時代の思い出や農村の生活が丁寧に描かれていて、観客は深い懐かしさに浸った。「アニメは実写とはまた別のリアルな世界を作り出せるんです」。
35(昭和10)年、三重県宇治山田市(現・伊勢市)に生まれる。父は旧制中学校長。岡山朝日高校をへて東京大学文学部仏文科に進んだ。学生時代には詩人で脚本家のジャック・プレヴェールに傾倒し、彼が脚本を書いたアニメ映画『やぶにらみの暴君』を見て魅了される。
卒業と同時に東映動画に入社。テレビアニメ『狼少年ケン』などの演出をてがけ、『太陽の王子 ホルスの大冒険』で初めて監督を務めた。同作品の評価は高かったが、時間と費用をかけすぎたという理由で助手に降格される。
その後、後輩の宮崎駿などと退社して童話『長くつ下のピッピ』をアニメ化しようとするが、原作者が許可せず挫折。アニメ制作会社で『アルプスの少女ハイジ』『赤毛のアン』などテレビアニメの演出や『じゃりン子チエ』の監督を引き受けた。宮崎が『風の谷のナウシカ』の監督を務めた時はプロデューサーだった。
いったん制作にとりかかると時間も資金も気にならなくなった。『風の谷のナウシカ』の収益を投入した『柳川堀割物語』は、資金が尽きてもなかなか完成しなかった。
85年、徳間書店にいた鈴木敏夫と、高畑、宮崎が中心になりアニメ制作会社スタジオジブリを設立。88年公開の監督作品『火垂るの墓』では大勢の観客を泣かせる。91年の『おもひでぽろぽろ』、94年の『平成狸合戦ぽんぽこ』も好評を博した。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2018年06月号