「子どものため」は偽善。教育関係者を利するだけ
昨年10月の総選挙で安倍首相が「3〜5歳の幼児教育の完全無償化」「私立高校の無償化」ばかりか「大学教育の完全無償化」にも言及したことで教育改革(人づくり革命)をめぐる議論が沸騰している。ここではそれを整理したうえで、教育への税の投入がどこまで正当化できるかを論じてみたい。
教育無償化でまず押さえておかなくてはならないのは、それが「教育関係者への補助金」だということだ。
奇妙なことに、世間一般では「無償化」は、子どものために国民の税金を使うことだとされている。もしこれがほんとうだとすれば、補助金は全額子ども(もしくは親)の銀行口座に振り込まれるべきだが、現実には税が投入されるのはほとんどが学校などの教育機関で、その大半は教職員の給与にあてられる。
教育無償化というのは、「教育関係者に補助金を支払う→授業料がタダになる→より多くの子どもが教育機会を得られる→教育を受けた子どもが社会的・経済的に成功する→結果として日本社会はよりゆたかになり、ひとびとはより幸福になる」という、「風が吹けば桶屋が儲かる」のような話だ。しかし、いちばん肝心の「風が吹く(教育関係者に補助金を支払う)」というところが意図的に隠蔽されていて、マスメディアもこのことをいっさい報じない。
こうした言い方を、難癖をつけているように感じるひとがいるかもしれない。「結果的に子どものためになるのだから同じではないか」というのだ。
そこで、「パンを食べると健康になるから税金でパンをタダにすべきだ」という主張を考えてみよう(べつにパンに恨みがあるわけでもなく、センベイでもトルティーヤでも同じだ)。このときパン屋が、「国民の健康のためで自分たちは関係ない」と他人事のような顔をしていたら、あなたは「バカじゃないのか」と怒り出すだろう。
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source : 文藝春秋 2018年03月号