★丸紅の内向き経営
丸紅(國分文也社長)が財務体質の改善に躍起になっている。中期経営計画では2018年度末にフリーキャッシュフローを黒字化する目標を掲げていたが、上乗せして4000億〜5000億円にすると発表。稼いだカネを一層貯めこむ姿勢を鮮明にした。
「取得したアセットを使って次に何をやるのか。1+1を2ではなく、どうやって5にするか。知恵の勝負になる」。年頭の社員向け挨拶で國分社長はそう発言した。キャッシュアウトを控え、保有資産で上げられる利益を極大化しろというわけだ。背景には、米穀物商社ガビロンでの投資失敗がある。ガビロンは13年に丸紅の投資案件としては過去最大となる2700億円を投じて買収。だが初年度から躓き、計画未達は今も続いている。昨年度には500億円の減損処理も実施した。
それゆえ「羹に懲りて膾を吹いているのでは」とある証券アナリストは見るが、実はもう1つ理由があると言われている。それは國分社長が年頭の挨拶で「この10年間の投資は失敗続きだった」と語ったことに端を発する。「この発言は08年から13年まで社長を務めた朝田照男(現会長)時代の投資が失敗だと言っているに等しい」(丸紅幹部)。確かにガビロン買収は資産査定が甘く、失敗だった。だがそれに加え、「買収着地前から同社幹部を招き懇親会を開いたりしたことを國分社長は苦々しく思っていた」(同前)。そのため、財務体質の改善優先は、前任者の経営を否定するために言っているだけではないかと受け止められているのだ。
國分社長肝いりで手掛けたメキシコ湾の原油・ガス田事業でも減損が発生しており、「この10年の……」発言は自省を込めたものとも受け取れなくもないが、いずれにせよ「将来に向けた種まきを放棄している」(別の幹部)ことに変わりはない。実際、皇居前の旧東京本社ビルを売却、その他の遊休資産売却も加速している。本社がグループ会社から配当の形で吸い上げている“上納金”も積み増されており、グループ全体で投資に回すカネは減る一方だ。「これで商社業界万年5位が確定した。そればかりか再編の対象にすらなりかねない」。同社関係者にはそんな危機感が広がっている。
★ユニクロ柳井の苦悩
ユニクロのファーストリテイリング(柳井正会長兼社長)が、もがいている。原因の1つは、低価格衣料品店ジーユー(GU)の不振だ。「990円ジーンズ」を代表作として順調に成長路線を駆け上がってきたが、最近は消費者の好みの多様化に応えられておらず、2017年8月期は営業減益の見通し。ユニクロが商品や価格でGUの戦略を真似ていることから、自社競合に陥っているという指摘もある。グループ上席執行役員でGUの運営子会社社長の柚木治氏への柳井氏の不満も高まっているようだ。
ネット通販事業をめぐる混乱も起きている。柳井氏はファーストリテイリングが「製造小売業から情報製造小売業に変わらなければいけない」と主張。近年約5%程度で推移しているネット通販事業の売上比率を全体の30〜50%まで引き上げる計画だ。そこで16年春から大和ハウス工業(樋口武男会長兼CEO)と共同で東京・有明で巨大物流倉庫を稼働させたが、プロジェクトの責任者だったグループ執行役員の折笠時雄氏が同年末に退社。巨大倉庫だけに倉庫内の商品を保管、出荷する仕組みが構築できず、費用が膨れあがった責任を取ったとされる。
その一方で、ファッション業界ではアパレル通販サイト「ゾゾタウン」を運営し、時価総額1兆円を超えたスタートトゥデイ(前澤友作社長)などの存在感が拡大。異業種でもRIZAPグループ(瀬戸健社長)がジーンズメイト(冨澤茂社長)などアパレル関連企業を計7社買収し攻勢をかける。RIZAPグループはファーストリテイリングでシステム部長や執行役員CIOなどを歴任した岡田章二氏を幹部として招聘したことも業界で話題を呼んだ。
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source : 文藝春秋 2017年10月号