★第2のタカタ?
自動車部品大手の矢崎総業で、創業家出身の矢﨑信二社長への不満が高まっている。
知名度は低いが矢崎総業は世界45カ国に拠点があり、従業員数は約30万人。自動車用の電線(ハーネス)が主力商品で、2016年6月期連結決算の売上高は約1兆7000億円の巨大企業だ。
しかし2014年6月期以来、3期連続の最終赤字に陥っている。最大の原因は「グローバル企業でありながら、非上場を理由に世間の価値観よりも、創業家の意向を大切にする社風であること。その構図は、倒産したタカタ(高田重久会長兼社長)と全く同じ」(同社幹部)。
矢崎の社風を表す例のひとつが談合だ。同社は近年も談合を行ない、課徴金支払い命令を受けている。2012年、公正取引委員会からハーネスの取引で談合を認定され、国内では1社当たり過去最高となる96億円の課徴金を払った。同年、米国でも反トラスト法違反で摘発され、4億7000万ドルの罰金を科された。
「不正で何百億円もの罰金を支払い、1銭単位でコストを削る現場の努力を無駄にしている」(同社社員)
問題は矢﨑氏自身にもある。2014年2月には、矢﨑氏側近の大川敬仁執行役員秘書部長が失踪した。勤務時間中に都内のホテルで打ち合わせの後、突然行方不明となったのだ。「原因は矢﨑氏によるパワハラと見られている。自身の批判記事が経済誌に載ったことに矢﨑氏が激怒、大川氏は精神的に参っていたという。その後矢﨑氏は警視庁に事情聴取された」(警察関係者)。また矢﨑氏は自分が気に入ればどんな天下り官僚でも受け入れ、要職に起用している。「不祥事で停職となった元経済産業省の官僚も、執行役員に迎えた」(前出幹部)という。
現場の声を社長に伝えることができる「番頭」不在も問題だ。信二氏の実兄・矢﨑裕彦会長も、最近は社会貢献活動に熱心で本業は信二氏任せ。「唯一、矢﨑兄弟に諫言できるのが創業以来長い付き合いのトヨタ自動車の豊田章一郎名誉会長だったが、健康問題を抱え、それどころではない」(自動車会社幹部)。
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source : 文藝春秋 2017年09月号