「わが改革は挫折した」

三越伊勢丹前社長 沈黙を破る

ビジネス 企業

会長と話し合う時間を持つべきだった

伊勢丹新宿本店は世界一の売上げ ©時事通信

 大西洋氏(62)は1979年に伊勢丹入社。伊勢丹メンズ館の立ち上げにかかわって頭角を現し、2012年には、三越伊勢丹ホールディングスの社長に就任した。
「ミスター百貨店」と呼ばれるほど業界の顔だったが、今年3月6日に日経新聞が朝刊一面で「大西社長 辞任へ」と報道。その後、4月に社長を退任し、6月の株主総会で取締役からも退いた。
 その突然の退場劇をめぐっては、「三越、伊勢丹による派閥争い」「財閥系企業出身の社外取締役から圧力があった」「独断専行型の大西氏への反発」などと、多くの憶測が飛び交った。

 株主総会が終わるまで対外的な情報発信は控えてきましたが、一部に事実からはあまりにかけ離れた報道があったことに心を痛めてきました。今回はなるべく誤解がないよう、いまお話できる範囲で私の社長辞任についてお伝えしたいと思います。

 3月4日の段階で、最終的には自分の意志で辞表にサインをしました。この点は間違いありません。個人的には続投する気持ちはありましたが、社内の中間層を中心に厳しい声があったことを受け、自分が社長を辞任することが最善だろうと判断したのです。

 サインをした日には、石塚邦雄会長(現・特別顧問)から、昨年11月に行われた中間決算の記者会見の影響が大きかったという説明がありました。地方店舗の名前を具体的に挙げて構造改革に言及したこと、そして私が掲げた2018年度の営業利益500億円の目標を達成できず、2年ほど後ろ倒しにせざるを得なくなったこと――新聞や雑誌には色々なことが辞任の理由として書かれましたが、私が辞任の理由として承知しているのは、この2点に対する責任です。

利益の約7割を1店舗に依存

 11月の会見の席上では、構造改革の対象として伊勢丹松戸店、伊勢丹府中店、松山三越、広島三越の4店舗の名前を挙げました。しかし、これは別に不用意に発言したわけではなく、「閉めるという話ではないので、具体的な名前を挙げてもかまわないだろう」と判断したうえで話したことでした。ですから「閉店する」とは一言も申し上げませんでした。

 不本意なことにその後「4店舗閉店」という情報が独り歩きして、お取引先や従業員に不安が広がってしまいました。しかも、私が独断でそのような方向性を決めていた、と尾ひれまで付いていたようです。その直前に三越千葉店の閉店を発表していたために、労働組合もセンシティブになっていた状況での発言でしたから、私の配慮が十分ではなかったかもしれません。1カ月に1回の労使懇話会でも、反対する意見や質問が出ました。

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source : 文藝春秋 2017年08月号

genre : ビジネス 企業