与野党の対立、政府との攻防……その舞台裏を明かす
昨年8月に退位をめぐる天皇陛下の「お気持ち」が表明されました。このビデオメッセージを拝見して、私は2つのことを直感しました。1つは、退位の問題を決して政争の具にしてはならないということ。もう1つは、各党・会派で合意点を探る必要があるということです。
この時点では、退位に向けた手続きをどのように進めていくか、私の中でも明確なビジョンが描けていたわけではありません。しかし、退位の実現には法改正が必要です。いずれ、立法府たる国会で審議されることになる。そのときに、政局の対象になるようなことがあってはならない。お気持ち表明を受けて発表した議長謹話を〈国民を代表する国会議員には(略)粛然とした対応をすることを望みます〉と締めくくったのも、そうした思いを込めてのことです。この日から、法案成立に向けた模索の日々が始まりました。
大島理森衆院議長(70)は、1983年の初当選以来11期連続で当選し、文部大臣や農水大臣を歴任。とりわけ自民党国対委員長としての通算在任期間は1430日と歴代1位の記録を持つ。
天皇陛下の生前退位にあたっては、衆院議長自ら法案の作成に向けた各党協議を主導。国対畑で鳴らした手腕をいかんなく発揮し、与野党の合意形成を果たした。
その大島氏が、法案成立までの日々を振り返った。
ビデオメッセージが公表された翌日の8月9日、私は長崎の平和祈念式典で、安倍晋三首相とご一緒する機会を得ました。そこで「この問題は総理ご自身で主導なさるのか、あるいは他に中心となって動く方がいらっしゃるのでしょうか」と伺ったところ、「菅さんにお願いする」というお話があった。そこで後日、菅義偉官房長官に政府の方針を尋ねると「有識者会議を設置して、議論を重ねながら、ある程度の段階で立法府に相談する」とのことでした。
実はこの頃、私は漠然とした不安を抱いていました。この問題について、立法府としてどこまで責を負うべきか、考えあぐねていたのです。
天皇の国事行為に助言と承認を行うのは内閣です。だから退位に関しても、内閣に任せるべきだとする考え方もありえます。そんな時、2代前の衆院議長である伊吹文明先生のインタビュー記事を拝読しました。先生は、天皇の存在は「日本国民の総意に基づく」と憲法にあることを指摘した上でこう述べていました。
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source : 文藝春秋 2017年08月号