私も女だから、同性たちの社会進出が盛んになるのは大歓迎である。だが、それに邁進中の同性たちを見ていて、ある種の絶望感を抱かずにはいられない。
なぜ彼女たちは、がんばり過ぎるのか。なぜ、男の先任者たちがやらなかったことだからやってやる、とでもいう想いで突走ってしまうのか。
誰もやらなかったことをやりたい、という想い自体は悪くない。だが、それを考えるのが女だと、男がやらなかったことだからこそやってやろう、という感じになってしまうのである。
イタリアでは、首都ローマと、北部の大都市トリノに、初めて女の市長が誕生した。しかも2人とも、既成政党である中道左派や中道右派とは別の「五ツ星」という名の、ポピュリズムの色濃い政治団体から出ている。
私自身は、怒れるイタリア人という感じの、大成できなかった元コメディアン率いるこの団体の価値をまったく認めていないが、地方選挙は地方自治体のトップを選ぶ選挙である。それに勝ったこの二人に対しては、お手並拝見という想いでいたのだった。
ところが、まだ一年も過ぎていないというのに、明暗がはっきり出てしまったのである。トリノの市長のマスコミへの登場率はいたく低いのに、ローマの市長は連日のごとくマスコミをにぎわすという形で。
マスコミとは、やるべき仕事を淡々とやっているだけでは報道してくれない。やるべき事柄は放置しておきながら、やらなくてもよい事柄にしつこくこだわっているとニュースにしてくれる。女であることでは同じ、年齢もおおよそのところは同年輩、適度に美女であるのでも似ているこの2人の政治家としての業績は、一年も過ぎないうちに右左と言ってよいほどに分れてしまったのだった。
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source : 文藝春秋 2017年06月号