金正恩「本土決戦」なら世界は終わる 太平洋戦争の失敗に学べ

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旧帝国陸海軍のように暴発させてはいけない

金正恩氏 ©時事通信

 半藤 正直に言いますけれど、もしかすると本当に世界戦争になるんじゃないかと思いました。4月8日に、空母カール・ビンソンを中心とするアメリカ海軍第1空母打撃群がシンガポールから朝鮮半島へ向かったと聞いたときです。これはちょっと、ただごとじゃないぞと。

 船橋 同感ですね。あのときは私も、危機的な状況になるかもしれないと感じました。

 半藤 パッと思い浮んだのは、1962年のキューバ危機です。核兵器の材料を積んで向ってくるソ連の輸送船に対してケネディ大統領が警告して、米ソは核戦争寸前までいった。あのとき、私は「文藝春秋」編集部にいたんですけれど、「えっ、まさか」と背筋が寒くなった。あの感覚が甦りましたよ。

 船橋 私が思い出したのは、1996年の台湾危機のほうです。台湾独立を唱える李登輝総統を威嚇しようと、中国が台湾に向ってミサイルを発射した。台湾を飛び超えて、与那国島から60キロぐらいのところに着弾したんです。アメリカはインディペンデンスとニミッツの2つの航空母艦群を派遣しました。それを見て中国は潜水艦を引き返らせた。アメリカの空母は力の象徴ですが、今回もうまく使わないと相手の反動が怖い。

 半藤 ところが、なかなか朝鮮半島近海に現われませんでしたね。いまどの辺りにいるのかって、バルチック艦隊じゃないんだからと思っていたら、遠くのほうでオーストラリア海軍と共同演習をしていたという報道を聞いて、なんだキューバ危機とは全然違う。これは当分、戦争にならないよ、とわかったんです。

 船橋 太平洋軍のハリー・ハリス司令官は初めからオーストラリアとの合同訓練をしてからというつもりだったのですが、トランプ大統領が早合点して「無敵艦隊、朝鮮半島へ」と明かしてしまった。米軍は日本に朝鮮半島近海に到着するのは4月下旬と連絡してきています。それなのにトランプは「オレの強みは勘の良さ」なんて嘯いているんですから、この政権は前途多難です。

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source : 文藝春秋 2017年06月号

genre : ライフ 政治 国際 韓国・北朝鮮