本から気になる言葉を抜き書きしたノートが勝利の秘訣(取材・文・張替裕子)
毎年元日に、自分との「10の約束」をノートに書いています。「絶対に嘘をつくな」「言ったことは必ずやれ」「お前は選手よりも偉くない」――監督になってから始めたことなので、今年で6年目になります。毎年半分くらいは同じ内容なのですが、今年は「勘違いするな」「浮かれるな」という戒めの言葉が多くなりました。日本一を達成したからといって慢心せず、さらに強いチームを作らなければという気持ちが無意識にあるのかもしれません。
昨年、栗山英樹監督(55)率いる北海道日本ハムファイターズは、最大11.5ゲーム差からの逆転劇でパ・リーグを制した。クライマックスシリーズも順調に勝ち、続く日本シリーズでは、セ・リーグ王者の広島東洋カープに初戦、第2戦と敗れるも、そこからは怒濤のごとき4連勝で、見事10年ぶりの日本一の座に輝いた。
「奇跡の大逆転」といわれたペナントレース、2連敗で始まり4連勝で終わった日本シリーズと、昨年はファンの方たちもさぞかしハラハラされたと思います。僕としては、ファイターズらしい戦い方で1試合1試合勝っていけば、必ず最高の頂に登れる、勝ちきれると信じていました。「もう一生の運を使ってもいい、明日悪いことが全部起こってもいいから、今日の試合だけは何が何でも勝たせて下さい」という気持ちで、毎試合戦っていました。
「歴史」とは勝者の歴史です。どんなに頑張って15連勝という球団記録を打ち立てたとしても、優勝できなければ、それまで。であれば、やっぱり勝つべきだ、勝たなければいけないんだと思いました。選手たちに、「自分たちがやってきたことは間違っていなかった」と実感してもらうためにも、どうしても優勝して日本一になりたかったのです。
野球は「無私道」
栗山氏は、東京学芸大学卒業後、1984年にドラフト外でヤクルトスワローズに入団。89年には外野手としてゴールデン・グラブ賞に輝くなどの活躍を見せるが、ケガや病気が重なり、90年に現役を引退した。以来20年にわたってテレビ、新聞で野球評論家、スポーツジャーナリストとして活躍。2011年11月に北海道日本ハムファイターズの監督に就任した。
プロ野球選手としてのキャリアはわずか7年。監督どころかコーチ経験すらまったく無かった僕が、なぜファイターズの監督として招聘されたのか。オファーしてくれたゼネラルマネージャーのヨシ(吉村浩氏)とは公私ともに深い付き合いですが、監督就任を要請した理由を尋ねたことはありません。ただ、彼から声をかけられた時、僕は最初にこう言いました。
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source : 文藝春秋 2017年03月号