安倍と比肩しうる唯一の存在感に、様々な勢力が絡みつく
まるで事前に打ち合わせていたかのような答弁だった。
「日本維新の会が憲法改正について教育のあるべき姿を含め、具体的な考え方を示し、各論に踏み込んで真摯に議論しようとしていることに、まずもって敬意を表したい。子どもたちこそ日本の未来だ」
1月25日、参院本会議での代表質問。今国会での衆参両院憲法審査会による改正項目の絞り込みと、教育無償化を憲法で規定することを求めた“野党”日本維新の会の片山虎之助共同代表に対し、安倍晋三首相はこう述べた。
政権発足から5年目に入ったが、デフレからの脱却を目指したアベノミクスは道半ば。ロシアのプーチン大統領との「信頼関係」で打開を目指した北方領土交渉も、進展の兆しは見えない。トランプ大統領就任で日米関係も先行き不透明だ。
しかし、最大の悲願である憲法改正だけは現在、衆参両院で発議に必要な3分の2を制して好機である。環境が整えば、できるだけ早く憲法改正発議と国民投票に踏み切りたい。とはいえ、公明党は早期の改憲に慎重な姿勢を崩していない。国民投票では過半数の賛成を得なければならない。そのためには、発議段階で野党の一部を引き込んでおく必要がある。そこで、公明党も反対しにくい「教育無償化」を盛り込み与党を固めた上、維新を野党勢力から分断し、改憲への突破口を開く。安倍の答弁からは、一石二鳥の思惑が透ける。
小池が浮かべた笑み
安倍が改憲派形成に向けて第一声を放った直後、東京・西新宿の都庁。
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source : 文藝春秋 2017年03月号