対ロ外交で雲散霧消した解散カード

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安倍は外交、内政とも戦略の再構築の必要に迫られる

「中曽根康弘元総理は仰ぎ見る存在でしたから大変感慨深い。しかし、決して驕ることなく、中曽根総理のように平常心で1日1日に全力で当たり、結果を残していきたい」

 大勲位・中曽根を抜き首相在職日数が通算で1807日となった12月5日朝、官邸入りした首相・安倍晋三は待ち構える記者団の前で足を止め、神妙な面持ちで語った。「胸中に成竹あり」。表情とは裏腹に、大勲位超えに花を添える案を用意していた。

 安倍の腹案披露は念入りだった。同日午後5時前、国会内での自民党役員会冒頭、「『戦後政治の総決算』に挑むつもりだ」と述べた。中曽根政権のキャッチフレーズを唐突に口にした物言いに、出席者はいぶかしんだが、その真意は2時間後、自らが官邸でのぶら下がりで明らかにした。

「今月の26、27日、ハワイを訪問し、オバマ米大統領と首脳会談を行います。この際、オバマ米大統領とともに真珠湾を訪問します。犠牲者の慰霊のための訪問です。二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない。その未来に向けた決意を示したい。同時に、まさに日米の和解、この和解の価値を発信する機会にしたい」

 真珠湾は今も昔も太平洋における最重要軍事拠点で、米太平洋艦隊司令部が置かれている。1941年12月7日(日本時間8日)、日本海軍の機動部隊が奇襲攻撃し、約2400人の米国人が犠牲になった。日本の宣戦布告が1時間遅れたことで、当時のルーズベルト大統領は攻撃翌日の連邦議会演説で、将来「屈辱の日」として記憶されると訴えた。以来、長きにわたって日米関係のトゲともなってきた。

 中でも1177人が死亡した戦艦アリゾナの沈没は、米軍史上最悪の艦船被害の1つ。今も湾内に横たわる戦艦の上にアリゾナ記念館が建つ。この記念館を現職首相が訪問するのは初めてだ。戦後政治の総決算と肩肘を張るのも無理はない。ただ記念日に彩りを加えようとする余り、安倍政権らしい勇み足があった。当初、外務省は「現職首相が真珠湾を訪問するのは初めて」とアナウンスし、各メディアも一斉にそう報じた。だが、読売新聞が51年9月に吉田茂首相が真珠湾に立ち寄っていたと指摘。安倍も官房長官・菅義偉も注意深く「初」とは言及していなかったが、結局、菅が8日に「アリゾナ記念館で現職の首相が慰霊を行うことは今回が初めて」と軌道修正を余儀なくされた。政府関係者は「今の官邸は何事も『画期的だ』と演出しがちだ。官邸にゴマをする役人も含め、安倍政権の縮図だ」と嘆息した。

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source : 文藝春秋 2017年02月号

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