安倍が狙う小池封じの「奇手」

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党内では麻生太郎を震源に、派閥の合従連衡が加速する

 それは、普段は姿を現さない自民党内の「安倍派」が一堂に会した瞬間だった。2月15日夜、東京・赤坂の中国料理店「赤坂飯店」で派閥横断の勉強会「きさらぎ会」の新年会が行われた。白い丸テーブルに着席し、歴代首相も好んだフカヒレ入りのスープを前に、首相の安倍晋三は終始、上機嫌だった。日米首脳会談から2日前に帰国したばかりの安倍は挨拶に立つと「日米同盟の新しい時代をつくってきた」と切り出し、トランプ米大統領とのゴルフの秘話を披露。60年前に、当時のアイゼンハワー大統領と祖父の岸信介もゴルフ外交を展開したことも引き合いに出した。祖父は、思うようにいかないショットに「くやしい」と顔をしかめたアイゼンハワーを間近に見て、「人間模様を垣間見られた」と語っていたと述懐した。僅か30分ほどで退席したが、「3期9年」への総裁任期延長正式決定を控え、その顔には強い自信がみなぎっていた。

 きさらぎ会は会長だった元法相・鳩山邦夫の豊富な資金力と人脈で勢力を拡大してきた。鳩山が昨年6月に死去した後、官房長官の菅義偉が顧問に就任、活動を引き継いだ。当然安倍を支えることを基本方針に掲げる。メンバーは約120人とも言われ、最大派閥の「清和研(細田派)」(96人)をも上回る。今や自民党議員の約4分の1は無派閥の中で、菅が差配するきさらぎ会の動きは来年秋の自民党総裁選や「ポスト安倍」の行方を左右する。

明治改元150年への野心

 安倍が総裁3選を果たせば次の任期が始まるのは来年10月。実はその頃、安倍のもう1つのこだわりの節目が訪れる。「明治改元150年」を盛大に祝うという秘めた野心があるのだ。

 1868年10月23日、元号を改める「改元の詔書」が出された。それからちょうど150年となる来秋に向け、安倍政権はすでに様々なイベントの準備を進めている。昨年11月4日、首相官邸で開かれた「明治150年」関連施策各府省庁連絡会議の初会合には山内昌之・東大名誉教授が出席し、明治期に活躍した女性や若者に焦点を当てた事業の開催を提案した。他にも明治期に活躍した外国人の伝記の出版や、明治にゆかりのある建物の公開などが検討されている。

 自民党内には安倍の思いを実現すべく、現行憲法が公布された11月3日の「文化の日」を「明治の日」にしようという動きもある。この日は明治天皇の誕生日でもあり、戦前は「明治節」という祝日だった。昨年11月1日には、「明治の日推進協議会」(会長・塚本三郎元民社党委員長)の集会が国会内で開かれ、稲田朋美、古屋圭司ら保守系の国会議員十数人を含む約150人が出席した。古屋は「明治の時代こそ大切だったと全ての日本人が振り返る日にしたい」と語っている。同協議会には、伊藤哲夫・日本政策研究センター代表、大原康男・国学院大名誉教授、ジャーナリストの櫻井よしこら安倍シンパが役員に名を連ねる。

 安倍には「明治」への特別な思いがある。「1000万人といえどもわれいかん」。幕末、長州・萩の松下村塾で教えた吉田松陰が好んだ孟子の言葉を祖父の岸はしばしば口にした。祖父の思いを受け継ぐ安倍も、この言葉を好んで使う。

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source : 文藝春秋 2017年04月号

genre : ニュース 政治