★トランプ勝利の余波
トランプ氏の米大統領選勝利で経済政策への期待が日本国内でも高まっている。インフラ投資拡大方針に伴う金利上昇や金融規制緩和への期待が追い風となり、特に金融株の動きが目立つ。
メガバンクで最も株価を伸ばしたのが三菱UFJフィナンシャル・グループ(平野信行社長)。ライバル2行に比べ、米国の事業基盤の充実が市場で評価された。前身の旧三菱銀行と旧東京銀行が、米国の銀行を買収したのは80年代。統合された現在のMUFGユニオン・バンクは全米で400以上の店舗網を持つ。昨年度決算では、500億円以上の利益をもたらした。
米国展開の極めつきは2008年のモルガン・スタンレー(ジェームス・ゴーマン会長兼CEO)への巨額出資。同社は米投資銀行業界でゴールドマン・サックスと双璧をなす存在だったが、リーマン危機時に経営不安に陥り、三菱UFJが救済の手を差し伸べた。ただ、三菱UFJは22%の株を持つ筆頭株主となったが、モルガン・スタンレーの経営には手を出していない。日本での証券業務を統合再編した程度だ。三菱UFJは、あくまで集めた預金を基に融資を行う商業銀行。M&Aに巨額資金を投じたり、デリバティブを駆使し高収益を狙う投資銀行業は勝手が違う。それにもともと世界の金融界ではモルガン・スタンレーの方が格上だ。
この両者の関係が、トランプ政権誕生で大きく変わる可能性がある。オバマ政権による金融規制強化で投資銀行の自由度は狭まっていた。それが緩和されれば、モルガン・スタンレーが攻撃的な経営に回帰するのは必至だ。経営の自由度を求め、三菱UFJから離脱する遠心力も働きかねない。一方でこれまでの経緯から、三菱UFJが手綱を締めることも考えにくい。
昨年度、三菱UFJはモルガン・スタンレーへの出資で1500億円近い利益を計上した。確かに純投資としては成功だが、10年近く経ってもグループ戦略上は中途半端なまま。出資解消で利益を確定し、注力するアジアの商業銀行ビジネスに資金を振り向けることも有り得る。互いにとって、決して悪い話ではない。
★ポスト榊原は誰か
いま“ポスト榊原”が財界で話題だ。榊原定征日本経団連会長の任期は、2018年6月まであるにもかかわらず、だ。それゆえ「榊原会長が最近ピリピリしている」(財界担当記者)という。
話題の中心は、「次期会長の大本命・トヨタ自動車の豊田章男社長に断られたこと」(前出記者)。これまで東京五輪という節目の時期のリーダーにはトヨタが相応しい、という意見で財界はほぼ一致していた。トヨタはいま内山田竹志会長が経団連副会長を務めているが、任期は2017年6月まで。後任として章男氏が副会長になり、翌年トップに就任するというのが、描いていたシナリオだった。しかし「章男氏の父・豊田章一郎名誉会長が『まだ早い。次の次なら引き受けてもいい』と断った」(同社関係者)ようだ。章男氏自身も社業優先の意向が強いという。
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source : 文藝春秋 2017年01月号