トヨタの“影の会長”、カリスマ経営者と長男、カジノ解禁前の難局、シャープとパナの選択

丸の内コンフィデンシャル

ビジネス 企業

★トヨタの“影の会長”

 トヨタ自動車グループの中で小林耕士・デンソー副会長の存在感が増している。小林氏は滋賀大卒業後、トヨタに入社。主に財務部や国内営業に在籍し、部長職まで勤めた後にデンソー(有馬浩二社長)の常務役員に転じて、とんとん拍子で出世街道を歩んできた。小林氏は現在、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の理事を務めるほか、昨年11月に名古屋商工会議所副会頭にも就任。本業が忙しく財界活動にまで手が回らない豊田章男・トヨタ社長の名代を務めている。

 豊田氏の小林氏への信頼が厚いのには理由がある。豊田氏が役員になる前に2回も上司を務め、「創業家の御曹司ということで甘やかす人が多かったのに、小林氏は他の部下と分け隔てなく接した。時には厳しく怒ることもあり、それが却って章男氏の心を掴んだ」(名古屋財界関係者)。

 ある財界記者が明かす。「名古屋商工会議所の副会頭には、元トヨタ副社長で現在は豊田通商会長の小澤哲氏が候補に挙がっていたが、章男氏が了承しなかったことから小林氏にお鉢が回ってきた」

 社交的で明るいと言われる小林氏は「情報収集力が落ちたトヨタの渉外・広報本部の立て直しの『密命』も章男氏から受けている」(前出・財界記者)。さらに“トヨタのCIA”として、グループ全体の戦略や役員の動向をチェック、それを章男氏にレポートして役員人事にまで影響力を持つようになったという。

 トヨタでは内山田竹志会長も日本経団連副会長として章男氏の名代を務めるが、「エンジニア出身で紳士的な内山田氏は策を弄するわけでもなく、知恵袋としては物足りない」(トヨタOB)との声もある。このため、小林氏が実質的なトヨタ会長の機能を担う“影の会長”のような存在になりつつあるのだ。

 だがトヨタ本体の役員を経験していないことや、章男氏との関係も知られていないため、東京の財界では「あの人物は一体何者なんだ」といった声も出ている。また、その歯に衣着せぬ言動から敵も少なくない。小林氏の権勢は今後も増していくのだろうか。

★カリスマ経営者と長男

 2人のカリスマ経営者の後継者問題が浮上している。1人目が「買収王」の異名を持つ日本電産の永守重信会長兼社長。同社は有価証券報告書に事業等のリスクとして「永守重信(氏)への依存」が記載されるほど、創業者・永守氏の意向がすべて。その永守氏も、もう72歳だ。

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source : 文藝春秋 2017年02月号

genre : ビジネス 企業