金正恩は核ミサイルを実戦配備する

牧野 愛博 朝日新聞記者・広島大学客員教授
ニュース 政治 韓国・北朝鮮

 極めて合理的に進められる開発。標的は米国本土だ

北朝鮮の弾道ミサイル発射実験 ©時事通信

 

「9」は北朝鮮の指導者が好む縁起の良い数字だ。朝鮮半島でも盛んな花札の「おいちょかぶ」で最高の数字。金正日総書記の誕生日は2月16日で、2+1+6=9。長距離弾道ミサイルを発射した2月7日、潜水艦発射弾道ミサイルを発射した4月23日、ムスダン中距離ミサイルを発射した5月31日、いずれも足すと9となる日付だった。

 そして、9月9日午前9時(日本時間同9時30分)、北朝鮮・咸鏡北道吉州郡豊渓里の実験場で5回目の核実験が行われた。マグニチュードは5.0、爆発の規模はTNT火薬相当で12~13キロトン。過去最大規模の爆発で、同15キロトンとされる広島型原爆に迫るエネルギーと評価された。北朝鮮が1年に二度、核実験を行うのは初めてのことだ。

 この実験を巡り、日本と韓国は対照的な動きを見せた。日韓両国には、米キーホール偵察衛星が撮影した北朝鮮の写真が防衛ルートを通じて配信されている。それによれば、8月終わりごろから、2~4回目の実験があった北側主坑道と、未使用の南側主坑道の入り口に偽装幕がそれぞれかけられ、「実験間近」を伺わせた。日本が誇る「長い耳」=通信所が傍受した、実験場近くで飛び交う北朝鮮の無線通信も、この判断を後押しした。

 日本政府は9月9日が北朝鮮の68回目の建国記念日であることも考慮、9日前後を「Xデー」と定めていた。関係政府機関に、核実験発生時の対応についての極秘マニュアルを配布。航空自衛隊築城(ついき)基地(福岡県)に配備されたT4練習機には、核実験時に発生する核物質を集める集塵ポッドが取り付けられ、いつでも発進できる態勢が取られた。

 日本が態勢固めを終えた頃、小柄で細身、太い眉が印象的な男が極秘裏に北京に到着した。朝鮮労働党国際部の金成男副部長。中国共産党中央対外連絡部のカウンターパートで、「党対党の特殊な関係」を望む北朝鮮が送った使者だった。

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source : 文藝春秋 2016年11月号

genre : ニュース 政治 韓国・北朝鮮