中国の野心は核でしか止められない

米地政学の第一人者が辿り着いた冷酷な真実

政治 国際 中国

大国が平和的に台頭することはありえない。中国の挑発を前に日本は沈んでいいのか

ミアシャイマー氏・船橋氏 ©文藝春秋

「中国は平和的に台頭できるか」
 地政学、そして「現実主義」国際政治学の第一人者として知られるミアシャイマー氏は昨年、主著『大国政治の悲劇』(五月書房)の改訂版を刊行するにあたり、こう題した新章を書き加えた。ミアシャイマー氏は、ウエストポイント(陸軍士官学校)を卒業し、空軍に五年間勤務した経験も持つ。現在は、シカゴ大学で教鞭をとり、米外交誌「フォーリン・アフェアーズ」の編集顧問も務めている。

 船橋 訪日は、今回の明治大学国際政策研究所による交流活動や講演が初めてだそうですね。日本での聴衆の反応はいかがですか。

 ミアシャイマー 私の現実主義に立った理論に、耳を傾ける人が増えたことを実感します。私が中国についての議論を始めたのは二〇〇〇年代はじめのことでしたが、「近い将来、中国が米国と並ぶ大国として台頭する」などと周囲に話すと、「ジョンは頭がおかしくなった」と言われました。ところが、北京五輪が開かれた〇八年以来、中国が周辺国を緊張させるような振る舞いを相次いで起こすようになりました。日本との尖閣諸島をめぐる動きをはじめ、南シナ海の西沙・南沙諸島をめぐるベトナムやフィリピンなどとの領土争いなどです。それに応じて、米国だけでなく日本、韓国、オーストラリアなどでも、私の理論に対して関心が高まってきました。

 船橋 日中関係も、〇八年頃から情勢が変わって来ました。中国が尖閣諸島周辺に監視船を送り込み、領海侵犯したのが〇八年十二月。尖閣周辺の海域で中国が支配権を誇示した初めてのケースでした。

 ミアシャイマー 中国の行動はいつも挑発的なのですが、気を付けなくてはならないのは、彼らが「危機は他国に誘発されて起こった」と考えている点です。つまり、中国は自国に対する脅威に対する「リアクション」として、対外的な行動を取ったと思っている。尖閣の問題でも常に日本側に原因があると訴えますが、それも同じ論理です。

 船橋 相手の反応を逆手に取る形で攻勢に打って出る、いわゆる「反動的自己主張(reactive assertiveness)」ですね。その中国の圧迫に周辺国が過剰反応した瞬間、中国は周到に事前準備された計画に沿って、既成事実(ステータス・クオ)を一気に変更するやり方です。

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source : 文藝春秋 2015年03月号

genre : 政治 国際 中国