「人間宣言」で平和の象徴となられた天皇だが
沖縄の占領、靖国問題などその歩みはけして平坦なものではなかった……
「聖断」天皇はいつ終戦を決意されたのか
半藤 10月号の『昭和天皇実録』(以下『実録』)についての座談会は、読者の皆さんに大変よろこんでいただけたということで、私としても欣快の至りであります。しかし、話題が戦前に偏っているのではないか、というご指摘もいただきました。63年という、神話を除いてはもっとも長いご在位だった昭和天皇です。そのすべてを読みたいという方が大勢いらっしゃるのでしょう。
保阪 ならば今回は、前回あまり触れなかった昭和20年8月10日の「聖断」から昭和64年1月7日の「崩御」までを論じましょう。
半藤 まずはその第一回の聖断です。今まで歴史家はもとより、私どもジャーナリズムの歴史好きの間でも、天皇が戦争を止めようと本気で決意したのはいつなのか、常々議論になってきました。20年8月6日の広島への原爆投下なのか、それとも8月9日のソ連参戦なのか。どちらかというと、これまではソ連参戦のほうが強かったように思います。
しかし、『実録』を読むと、どうやら原爆投下の方が、天皇の心をより大きく動かしたのではないかと思えるんですね。というのも、天皇は8月8日に東郷茂徳外務大臣へこう話しています。
〈この種の兵器の使用により戦争継続はいよいよ不可能にして、有利な条件を獲得のため戦争終結の時機を逸するは不可につき、なるべく速やかに戦争を終結せしめるよう〉(昭和二十年八月八日)
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source : 文藝春秋 2014年11月号