「魚はおかしくなっちゃった」。伝説の鮨職人が憂う鮨の“未来”(取材・構成・一志治夫)
本当に魚はおかしくなっちゃったね。
カツオはないわ、マグロは来ないわ、季節や旬が二十年前とはすっかり変わっちゃった。
この店を始めた昭和四〇年(一九六五年)頃は、ほしいものは何でも手に入ったんです。夏場にかかってくれば、天然のシマアジはちゃんと出てくるし、秋口になればイナダやカンパチが並ぶ。季節季節で旬の魚が全部出てきた。でも、いまは、それがすっかりなくなっちゃったんだから。
開口一番、江戸前鮨の危機を語るのは、銀座「すきやばし次郎」の初代・小野二郎さんだ。「すきやばし次郎」といえば、六年連続でミシュランの三つ星を獲得、「現代の名工」にも選ばれた二郎さんにスポットをあてたドキュメンタリー映画「二郎は鮨の夢を見る」(デビッド・ゲルブ監督・二〇一三年二月公開)も話題となり、その知名度は世界的なものとなりつつある。二郎さんの話は続く。
いまから十五年ほど前、私は、『すきやばし次郎 旬を握る』(里見真三著 文藝春秋刊・一九九七年)という本を出しました。一年半かけて旬の魚について語り、四季の鮨のネタを撮ってもらったカラー写真たっぷりの、マグロなんかは部位ごとに撮った贅沢な本なんですけどね。
あの当時でさえ、私が銀座「与志乃」の親方になった昭和三五年(一九六〇年)頃とは、随分ネタが変わってきてはいたんですが、今や、『旬を握る』で写した魚はさらに貴重になっていて、しかもあの頃とは旬がすっかり変わっちゃっている。いま見ると、「あれ、なんだ?」という春夏秋冬になっているんです。
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source : 文藝春秋 2013年08月号