社会の中で生きていくため、ビジネスを推進していくために最も重要な能力の一つとして「コミュニケーション能力」は不可欠だ。ビジネスに限定していえば、コミュニケーションが取れないと仕事にならない。
コミュニケーションは「信頼関係の構築」「円滑な業務運営」「組織風土の醸成」などの基本だ。コロナ禍によりフィジカルでのコミュニケーションが制限される中、「メンバーの状況把握が難しい」「横の連携が希薄になった」「雑談が減ったことにより職場が静かになった」など課題も浮き彫りになり、その重要性は増している。
そこで本カンファレンスでは、「最強のコミュニケーション~対話と対話の総和が創り出す成長シナリオ」~をテーマに、ビジネス環境の変化やデジタルツールの進化により、複雑化・多様化するコミュニケーションのあり方を考察する。
恐れず意見を言い合える「心理的安全性」、対話と対話を繰り返すことで生まれる「腹落ち感」、非対面コミュニケーションの高度化、個のパフォーマンスを最大化する組織運営とリーダーシップ、ステークホルダーとの適切なコミュニケーションの取り方などについて、最前線で活躍しているイノベーターの皆様の講演を通じ検証する。
■基調講演
伝わらない 、分かりあえないことを理解することから始めよう
~ リーダーに求められる言語化力と伝える力 ~
劇作家・演出家・芸術文化観光専門職大学 学長
平田 オリザ氏
劇作家・演出家。芸術文化観光専門職大学学長。劇団「青年団」主宰。江原河畔劇場・こまばアゴラ劇場芸術総監督。1962年東京生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。1995年『東京ノート』で第39回岸田國士戯曲賞、2019年『日本文学盛衰史』で第22回鶴屋南北戯曲賞を受賞。2011年フランス文化通信省より芸術文化勲章シュヴァリエ受勲。演劇の手法を用いた多様性理解・コミュニケーション教育にも取り組み、各地の自治体・NPOとも連携してワークショップを実施している。2019年より兵庫県豊岡市日高町に移住し、劇団の新拠点となる江原河畔劇場を設立。豊岡市芸術文化参与、豊岡演劇祭フェスティバル・ディレクターも務める。
現代は他者との接触が少なくなり、初対面の人に話しかけることが苦手な人が増えている。例えば列車の旅で、隣や近くに座った初対面の人に「旅行ですか?」と話しかける日本人は約1割、話しかけない人約6~7割。残りが「場合・相手による」。
同じ質問(ワークショップ)を海外でやってみた。オーストラリアでは、英国上流階級の相手をも念頭に置いた「人種や民族による」という回答が多かったり、米国では東部・西部・中西部など地域によって「話しかける」と答えた人の割合が違った。他民族国家であるオーストラリアや米国は、相手と近接した際に「敵意を持っていませんよ、私は安全です」と示し合わないとそれがストレスになってしまう社会だ。
その一方、島国文化で育ち初対面の人に話しかけるのは野暮と考え、声をかけない日本人。だからといって、コミュニケーション力が低いわけではない。米国・豪州人は声を掛け合わないと緊張してしまうが、日本人は声を掛ける、掛けられることが緊張のもとになる。これは文化の違いであり、善し悪しや優劣ではない。米国流の声を掛け合うビジネス由来のコミュニケーションが全てではない。コミュニケーションの6~7割は民族の文化や習慣に根ざしたマナーなのだ。
「こういうコミュニケーション能力を必要としているから、このようなコミュニケーション教育をしなければならない」という整理と論議が必要と考える。コミュニケーションの多様性、文化の多様性を謙虚に受容しなければならない。若者、学生達が身につけるべき能力は「次に行く国はどんなコミュニケーションを取るのだろうという好奇心と、自分たちの文化を押しつけない謙虚さ」である。それが本当のグローバルコミュニケーション・スキルなのではないだろうか。
言語や会話の習慣は、お国柄、民族性、国民性により千差万別。日本のように敬語が難しい国、韓国のように年齢が優先される国がある。“欧米”とひとくくりにもできない。隣り合う英国とアイルランドでも違うし、オーストリアやドイツでは機内で隣の知らない人にあまり話しかけないという調査結果もある。コミュニケーションというとフレンドリーに話しかけて……というイメージがあるがそれは米国文化の強い影響であって、普遍的な“コミュニケーション能力”なんてない!
私たちは言葉にイメージと個性を持っている。“Context”は受験英語では「文脈」だが、「その人がどんなつもりでその言葉を使っているかの全体像」と思って欲しい。例えば「旅行ですか?」は、そうした声がけをまずしない日本の現代の高校生にとってはコンテクストの外側にある言葉。だから使うのが難しい。これをコンテクストの「ずれ」という。ずれは、「ちがい」よりも大きい。
ホワイトボードを使って説明する平田さん
チェーホフの劇には「サモワール(茶器の一種)」という言葉が出てくる。日本人には馴染みのない言葉だから検索して調べればいいが、「旅行ですか?」はなまじ意味が分かってしまうから、言い方使い方が難しく時に失敗してしまう。日常的な台詞、相手も分かってくれているというところや言葉にコミュニケーションの難しさや落とし穴がある。
コンピューターはコンテクスト、文脈を読むことが苦手だ。例えば「ボウリングに行こう」はそれなりの関係性がすでにある人どうしが交わす言葉だが、コンピューターは言葉どおりに情報処理するしかない。子供が家に走って帰ってきて「宿題やっていかなかったけれど平田先生は怒らなかった」と嬉々として親に報告するのは、「平田先生が好き、優しい」の意でもあるのだが、コンピューターはそうした受け止めはしない。
社会的弱者はコンテクストでしか話さない。いいコミュニケーションとは、相手のコンテクスト、真の意図、揺れる気持ちを受け止め、しっかり受容していることをシグナルとして返してあげること。教育や医療、介護の世界で、「あなたの伝えたいこと訴えたいことを理解しています。あなたに集中していますよ」とすぐに示してあげられる暗黙知、ノウハウを蓄積することはとても大切だ。科学や医療が発達すればするほど、それを支える科学・医療コミュニケーションが重要になる。人間に残された最後のコミュニケーションの領域である。
社会で、文科省で、リーダーシップ教育の強化が叫ばれている。人を引っ張る力や演説・ディベート力、ロジカル/クリティカル思考も大事だが、今後の日本社会で必要とされるリーダーの重要な資質の一つは「社会的弱者のコンテクストを理解する能力」である。論理的に話せない人の気持ちを汲み取る能力、リーダーシップが大切。コンピューターが理解しない「情報価値判断」ができるのが人間のコミュニケーションの特徴だ。
ビジネス現場のように時間が限られていたり、医療現場のようにパニック状態が起きやすかったり、大学研究室のように密室状態だったりするとコンテクスト理解のサイクルが妨げられてコミュニケーション不全が起きる。話しかける人、受け止める人だけに負荷をかけるのではなく、話しかけられやすい環境になっているか、場作りができているかを意識したい。例えば病院や医者は、論理的な説明だけ上手くてもだめ。患者が医者に質問がしやすい椅子、壁、導線などになっているか。情報伝達ルートやデザイン、建物、ひいては立地も重要だ。
原因と結果を一直線にとらえず、複雑系で捉えるのがコミュニケーションデザイン。若年層のコミュニケーション能力は決して低くない。育った環境の多様化に伴い、能力が多様化している。大勢の前で話すのが得意な人、一対一の対話が得意な人、それぞれが意見を言いやすい場、ハラスメントが起きにくい環境をデザインするのが管理職の責任だ。若い人が意見を言わない……などと愚痴っている管理職は「会議すらデザインできない無能な管理職です」と言っているようなものだ。
◎まとめ=シンパシー(sympathy)からエンパシー(empathy)へ/
同情から共感へ/同一性から共有制へ。
相手や対象に同化するのは難しい。例えば演劇は「役になりきる、乗り移る」イメージだが、プロの俳優は実は「普段は話しかけない自分なんだけれど、話しかけるとしたらどんな自分になるだろう」と考えて演じている。自分という個性と、演じるべき対象の個性が共有できる部分を探して役に近づいている。同化するのではなく、共有できる部分を見つけて演じている。
シンパシー=親近感・同情も必要だが、同化するのではく共感・共有できる部分を見つける。これがシンパシーからエンパシーへという概念。例えば、医療や介護で社会貢献を目指す若者が、患者さんや障害を持った人の気持ちを100%理解することはできない。近づいていき、接点を作りながらコミュニケーションを取る。米国で国会議事堂に乱入した白人貧困層に同意はしないが、理解に努める態度・技術がエンパシー。企業の職場でも同様で、共感し共有できる部分を見つけることが大事だ。
我田引水になるが、エンパシーを培うには演劇が大事と欧州では考えられており、演劇教育が充実している。他者理解は違和感から始まる。管理職の皆さんは若者に同化する必要はないし同化を強いる必要もないが、必ずどこかに接点がある。接点を見つけ少しずつ広げていくような、時間をかけたコミュニケーションを進めていっていただきたい。
■テーマ講演①
「バーチャル・ファースト企業」を目指す Dropbox が実践する
同期・非同期のコミュニケーション方法
Dropbox Japan株式会社 パートナー営業本部
ディストリビューション営業本部 エグゼクティブパートナーマネージャー
福地 高志氏
商社系ディストリビューターに13年勤務後、2019年にDropbox Japan株式会社に入社。パートナー営業本部にてパートナープログラムの国内導入やパートナービジネスの立ち上げを支援。神奈川県の湘南エリアにて、趣味のSUPフィッシングを楽しみながらリモートワークを実践中。
◎リモートワークの実態調査
まず、2022年4月にDropbox Japanが電通マクロミルインサイトに委託して行った『ニューノーマル(Future of Work)の働き方』調査結果をもとに、リモートワークの現状と効果を報告。
リモートワーク活用は、社員の理想が48%であるのに対し現実は30%。30%の活用者によると、リモートワークで満足している点は①通勤時間の短縮(55%) ②自分のペースで仕事ができる(46%) ③時間や場所の制約がない(30%)。不満な点は①プライベートと仕事のメリハリ(31%) ②水道光熱費・食費の増加(30%) ③印刷ができない(24%)。
「同期・非同期」コミュニケーションの意識的な使い分けについても紹介。同期コミュニケーションとは、意思決定やニュアンスの共有、個別相談や1on1。非同期コミュニケーションは、報告や連絡事項、日程調整や資料共有のこと。同期・非同期コミュニケーションは、20代社員や部長クラスの管理職が「使い分け」の意識が高い。
◎「バーチャル・ファースト」企業が実践する働き方
Dropboxは世界最大規模のクラウドストレージ専業ベンダー。ユーザー数は7億人、利用国数は180ヵ国、導入企業数は50万社で、個人向けとチーム向けのプランを用意している。2020年には「バーチャル・ファースト」コンセプトを発表した。同コンセプトは①コラボレーションコアタイム(同期と非同期の使い分けルール) ②バーチャル・ファースト ツールキットの公開 ③Dropbox Studio(リアルの場。日本では東京・日本橋)の3つの特徴を持つ。
同社は活用ITツールの選定の考え方に、特定のカテゴリで最も優れた(適した)製品を複数組み合わせて利用する「ベスト・オブ・ブリード」方式を採用している。コロナ禍を経て、仕事の情報はチャットツール/ビデオ会議ツール/クラウドストレージ上で流通・共有・管理するようになり、「同期・非同期」コミュニケーションを、各ツールを適宜使いつつ一日の中で時間帯を区切って行っている(課題解決の具体例、以下の①②動画紹介あり)。
Dropbox活用で得られるソリューション紹介。「①作成した資料を関係者に確認してから取引先に送付」の場合
・Dropbox経由でファイルを共有、相手が見ているかどうかの確認が取れ、コメントのやりとりが可能
・社外に送付する際は、ファイルのコピーにパスワードと有効期限を設定してリンクを送付する
「②WEB会議と前後のコミュニケーション」の場合は、
・Dropbox Paperを使って事前の情報共有や会議中に共同で書き込むことができるので、ホワイトボード感覚で使用できる
・会議後もタスク管理やコメントのやり取りができるので、意思疎通を継続でき、やりっぱなしの会議がなくなる
などがある。
■特別講演
「世界最高のコミュニケーション」
伝わる、つながる!人が動く話し方、聞き方のルール
コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師
株式会社グローコム 代表取締役社長
岡本 純子氏
早大政経学部卒業。英ケンブリッジ大学国際関係学修士。米MIT比較メディア学元客員研究員。日本を代表する大企業や外資系のリーダー、官僚・政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチ等のプライベートコーチング」に携わる。その劇的な話し方の改善ぶりと実績から“伝説の家庭教師”と呼ばれる。2022年、次世代リーダーのコミュ力養成を目的とした「世界最高の話し方の学校」を開校。その飛躍的な効果が話題を呼び、早くも“行列のできる学校”となっている。
◎雑談・会話のルール
日本人は、複数の人の前で話すことと、初めて会う人と話すことを特に苦手にしている。米国ではコミュニケーションは科学だと捉えられている。ジムに行くようにコミュニケーションの訓練・修行をし、教育を受けている。
雑談・会話において大切なのは、相手が何を聞きたいのか、相手のカギ穴を見つけること。会話はキャッチボールであり、相手が受け取りやすいボールを投げなければ伝える、伝わる、繋がる、にならない。話すと聞くは1:2くらいの割合で上手くいく。相手にしゃべってもらうことを優先する。質問は、ファースト質問と“追い質問”の2回行い、相手の答えに関連する自分の話を織り交ぜていくと、“雑談の無限列車”となる。
どういう質問をしたらいいのか? 「ど力の法則」がある。どう、どんな、どの人、どんな人、どこ、どのタイミング、どんな時、どうやって、どのように、どうして──に、「おもいますか」「おススメですか」「お好きですか」を繋げる。まずは質問で鉱脈を見つけ、そこを掘っていく。
「共」だちの法則。1つでも共通点があればあっという間に距離が縮まる。「類似性の親近効果」を利用する。スポーツ、食べ物、趣味、そして “敵”など、質問をしながら共通点を探ろう。自分自身がウケることは狙わない。大切なのは相手を気分よくさせること。“Being interested is more important than being interesting. (米国人D.カーネギーの至言)”。自分が面白くなろうとするより、誰かに興味を持ち、面白がってあげる人のほうが好かれるものだ。
“教え魔”になることも避けたい。アドバイスを受け入れられる条件は、①そのアドバイスを得るのにお金がかかる ②アドバイスをしてくれる人がプロや経験を積んでいることが明らか ③聞き手がアドバイスを受け入れる精神状態にある、以上3つに限られる。教え魔より教えられ魔になろう。「アドバイス」をいただけますか? のひと言が円滑なコミュニケーションを生む。自分の弱さを認める強さを持ちたい。また、指示をするより自分で考えさせ、未来志向で何をしたい、すべきかを自分で言わせるほうがコミュニケーションは上手くいき相手は自発的に動く。
◎人前での話し方
「話す内容より話し方」である。印象が作られるのは、声=VOCALが38%/見た目=VISUALが55%/内容=VERBALが7%なのだ(メラビアンの法則)。どんなにいいことを言っていても、話し方が悪いとリーダーシップを印象づけることは難しい。また、「コンマ一秒で一生が決まる」。第一印象はとても大事だ。1回作られた印象はなかなか払拭することができない。声、手、足、目、表情……印象をコントロールせよ。
手は股の上で組まず、高めの位置、おへその上で組み合わせ軽く組む。本当の笑顔は目元に出る。目もしっかり笑って、強権ではなく共感型のリーダーになろう。ちなみに日本人は目元で、欧米人は口元で感情を読み取る。よって、日本人同士はマスクをしていても感情が伝わりやすいので、マスクはなかなか取れないのでは。
リーダーシップは語尾に宿る。説明させていただきたいと思います/お話させていただきたいと考えています/ご紹介させていただきたいと存じます/でございます/僭越ながら/……を~。……で~、……して~。敬語のエスカレート、言葉の過剰包装では、話のポイントが伝わりにくい。冗長な発言や、さまざま、いろいろ、といった曖昧な言葉の乱発も避けたい。
「ヤッホー」と3回唱えることで堂々と声が出る。1回目をド、2回目をミ、3回目をソの音程で発話し、挨拶は3回目の(高い)音程で始めると、エネルギーのあるよく通る声が出る。縷々述べてきたように、コミュ力は才能ではなくスキル。いつからでも、誰でも、あっという間に身につけることができる。「世界最高の話し方の学校」などでスキルを高めてほしい。
■テーマ講演②
発信しても見てもらえなきゃ意味がない!
自社公式スマホアプリで社内の情報均一化を図る実例を一挙紹介
株式会社ヤプリ マーケティング本部
神田 静麻氏
新卒で不動産業での新規営業、IT企業で営業、カスタマーサクセスを行い、2016年に創業期のヤプリへインサイドセールス部の立ち上げで参画。EC、小売、メーカーを中心に幅広く自社アプリの提案を進め、累計2000以上の商談を創出。同部のマネジメントを経て、2021年に現職に。
2013年に設立されたヤプリは、ノーコードでのアプリ開発を可能にした国内初の上場企業。のべ728以上の会社がアプリ制作に導入している。最近はマーケティング分野だけでなくビジネス分野、例えば取引先への情報配信や社内の情報共有、メディア、教育、行政、金融分野の情報ツールとしてアプリを活用する例も多い。
ただし、せっかく発信しても見てもらえない場合もまた多い。まずBtoB。メーカー(発信側)⇒取引先/販売店(受手側)の情報の流れは、オンライン化に伴い飽和状態になっている。コンテンツの更新や蓄積が進み、メール、Webサイト、カタログなどさまざまな方法で伝達するのだが、どこからアクセスすればいいのかが分かりにくく、欲しい情報にたどりつけない。
情報を整理・集約するためにはスマートフォンとアプリの活用が効果的だ。いつでもどこでも手軽に閲覧でき、確実に情報が届く。情報を探す時間も無駄であり、デジタル活用で「必要な人が、必要なものを、必要なときにすぐに引き出せることが大切」だ。アプリで製品の理解が進み、他社との差別化がなされれば売上が伸び、問い合わせが減少すればコストダウンにもつながる。
モスバーガーは、FC加盟店との情報共有や従業員満足度の向上を目指してアプリを導入。新メニューや接客マニュアルがどこでも確認でき、紙媒体を止めることで年間コストを3分の1に圧縮できた。ポーラでは、3万人の販売員に正確でタイムリーな情報を届けるために導入。情報伝達の工数が削減され、トップセールスの8割以上が活用するようになった。リンナイは取引先との関係構築や、同社側が少人数で運用できる体制実現に利用している。週1回のプッシュ通知の開封率は高く、問い合わせ電話の数が減り、動画再生の回数も増えた。
ノーコードのアプリ開発プラットフォーム「Yappli」は、スピーディに導入でき(最短1ヵ月)、多彩なプッシュ通知機能を持ち、高度なデータ分析が可能。また、クラウド上でたゆまぬ進化を続け、追加費用なく最新版・最新機能が使える。専門の部署がサポートや情報提供・共有を行い、カスタマーサクセスを実現する体制も整っている。Yappliでデジタルを簡単に、社会を便利にしていきたい。
■テーマ講演③
ツール1つでここまで変わるビジネスコミュニケーション
"電話、ビデオ = ブラックボックス・残らない" 問題を解決し資産に変える方法
Dialpad Japan 株式会社 シニアセールスマネージャー
柴田 友紀氏
2005年インターコール(現ウエスト・コーポレーション)に入社、Sales Managerとして日本と韓国のビジネスの立ち上げに携わる。2014年、Adobe Systemsに入社しDigital Marketingに携わる。2018年8月よりDialpad,Inc.に入社。
クラウド環境でオフィスやコールセンターの電話環境を構築するサービスを提供するDialpad Japan。アプリを活用した電話システムを提供し、パソコンやスマホ・タブレット、IP固定電話・受付端末いずれにも対応している。
AIが、通話内容のテキスト化やサマリ、感情分析、特定の単語や発話されたキーワード分析や統計データ解析などのサポートを行う。LINEとも戦略的パートナーシップを組み、今度は公式アカウントに通話ボタンを表示させ、ノーコードで実装できDialpadのコールセンターに接続することも視野に入れている。また、レストランの予約・時間の変更をAIが受付対応したり、企業では代表電話宛の電話転送業務を代行対応する。国内導入実績は2,000社以上、海外は2万5000社超。
会社での業務において、集中したいのに電話で作業が中断し仕事が進まず、集中力低下で作業効率が悪化するケースは多い。また、固定電話機を使う機会の減少/代表番号への電話の取り次ぎ/伝言メモでの共有/リモートワーク対応/コミュニケーションツールの多様化・サイロ化/電話問い合わせのブラックボックス化/社用携帯電話の貸与者が限定されている……などの課題をDialpadは解決できる。なお、電話関連の課題を解決することは、在宅ワークの促進や優秀な人材の採用にもつながる。
営業組織では、電話のコールログを残すのは面倒/引き継ぎ案件について前任者と顧客のやりとり記録が残っていない/顧客と言った・言わないのトラブルが発生する/電話での対応履歴を社内で確認することができない、といった課題が多い。インサイドセールス部門では、アポ取得メールを送付後営業から電話が来て社内連携に時間を要する/営業にお客さまのトーンや定性的な部分を伝えきれない/一日の架電件数を自分で数えている/架電件数が伸び悩んでいる/間違い電話をかけてしまう、という課題も頻出する。
総務・情報システム部門、広報・IR部門、採用・人事部門、コールセンターなど含め、電話にまつわる多種多様な課題についてのソリューションを提供できるのが、Dialpadだ。一方、BtoC向けの小売り店舗でのクラウドフォン活用事例も多数ある。ビジネスフォンとしての電話機能(外線・内線)を持ち、CTI連携(Salesforceなど)、アプリケーション連携(Slackなど)、グループウェア連携(Google Workspace/Office 365)も対応している。
Dialpadは、オフィスや部署代表電話、コールセンター、営業・インサイドセールス向けのクラウドPBXを提供する。ウェブ会議システムも今後ローンチ予定。現在利用されている固定電話番号 (03・06などの0AB-J番号) や新しい050番号に対応し、コスト(サブスクリプション方式)も抑えている。電話に詳しくない方でも操作できる管理画面や、直感的に利用できるユーザーインターフェイスを実際に見て、操作し体験してほしい。また、ウェブサイトで紹介している導入企業事例も参考にしてほしい。
■テーマ講演③
会社で潰れないコミュ二ケーション術
~苦手な仕事も相手も”ずるく”乗り切る仕事術~
テレビプロデューサー 佐久間 宣行氏
1975年11月23日、福島県いわき市生まれ。テレビプロデューサー、演出家、作家、ラジオパーソナリティ。「ゴッドタン」「あちこちオードリー」「ピラメキーノ」「ウレロ☆シリーズ」「SICKS~みんながみんな、何かの病気~」「キングちゃん」などを手掛ける。元テレビ東京社員。2019年4月からラジオ「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」のパーソナリティを担当。You Tubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」も人気。
聞き手 『週刊文春』電子版コンテンツディレクター 村井 弦
著書『佐久間宣行のずるい仕事術』(ダイヤモンド社刊)が出版後1ヵ月少々で13万部のベストセラーとなっている佐久間氏。社員プロデューサー時代の知見、および2021年4月にフリーランスとなってから新たに体得したコミュニケーション術を、聞き手の村井の問いに答えていく形で披露した。以下は要旨。
◎仕事術とコミュニケーション
「会社員時代も今も、『やりたいことはあるが、そこまでたどりつかない』という悩み相談を受けることが多い。結果に辿り着くまでに心がついえてしまう人が多い。組織の中での仕事とコミュニケーションはそれだけ難しいのだと思う」
「 若い頃“謝ることの大切さ”をまず意識した。謝ることでチャンスは舞い込んでくることには早い段階で気づいた。新人や若い人は必ず失敗する。失敗すると怒られるわけだが、謝り方によっては失敗が失敗ではなくなる。『ここは上手くいったがここは上手くいっていない、でも新しい芽が生まれているからこれは失敗ではなく“検証”なんです!』と、謝るときに事前に分析を済ませておいて説明できるようにした。すると、『こいつは次は失敗しないだろうし、さっきの失敗は検証になったんだな』と納得してもらえ、チャンスが次も巡ってくる」
「“謝り方より謝る人”。決定権を持っている人に先に謝る。決定権を持っていない、現場との板挟みになっている人に縷々謝ってその人がすっきりしても状況は改善しない。各先輩のメンツは大事にしなければならないが、決定権を持っていてその人がOKしたらチャラになる人が誰なのか見抜くこと。どんな仕事をするにしてもそのプロジェクトの“力点”を見極める。すると、謝る時だけでなくプロジェクトの小変更の際などにも役立つ。会社員のいいところは、成功/失敗の生の例がリアルタイムで沢山見られること。コミュニケーションの使い方と目標設定が上手い先輩を見習った」
「“報連相”=報告連絡相談は自分のためのリスクヘッジだ。その時々の上司に、どの情報をどのように組み合わせて渡すと自分たちのプロジェクトややりたいことが守られるのか、を考えて行うのが報連相。中間管理職は“知っていること自体”が大切なので、秘密にはせず、過激なとんがったプロジェクトこそ進捗や落とし所は随時、情報を選びつつ共有する。上司に安心感を与えること。会社の中で長く続いている慣習にはそれなりに意味がある。最低限の報連相はやっておけばいい」
「部下の理解や力量把握は先手先手で進めたい。部下の好きなモノ、得意なコト=過去のいい仕事はメモでもして先に覚えておく。そうすると何を頼みたいか、何ができないか頼まないかが明確になる。部下の強みや得意を把握している上司は信頼されるし気軽に相談される。『部下のことがわからない……』となる前に、先に把握しておく。時には、間のディレクターを抜いたアシスタントディレクターと自分のグループLINEも作ったりする」
「会議や議論が膠着状態に陥ったときは、2時間時間を取っていたとしても15分で打ち切ることもある。参加者にきちんと準備をしないと会議は打ち切られる、という意識を持ってもらうことにもなる。また、本論ではなく枝葉の部分、各論で停滞することもあるので、そのときは一番最初の企画書を再度見直すことも。KPI、核の部分の再確認は大切だ」
「ダメな上司、苦手な上司、楽をしたいと思っている上司に当たったときは、最低限の情報共有だけして“抜いて飛ばして、その上の階層の上司と本当に大事な情報を共有し自分のやりたい仕事をする機会”だと考えていた。もちろんメンツを立てて最低限の報連相、リスク伝達をすることは心がけ、『責任を取らせるために置いておけばいいや』と思っていた」
「繰り返しになるが、年上・年下を問わず一緒に仕事をする人が大事にしている、得意にしているモノやコトや強みを事前にしっかり把握しておきたい。頼むべきコトを見きわめるために。また、頼むときにはこれを頼むではなく『これを“あなたに”頼む』と言うべき」
「『あれやっといて』といった曖昧な指示や依頼をする上司とは、一対一のコミュニケーションは極力取らず、広くCcを広く入れるなど共有して集団交渉するといい。嫌なことを言われたり嫌な目にあいそうな場合は、上司をキレたら格好悪い場所や、その人が恥をかくといったコストを被る場にひっぱり出すといい」
◎チームマネジメント
「30代の頃、他の番組でうまくやれないと言われていたスタッフを自分の番組で大勢預かった。その部下たちが今、テレビ東京で面白いと言われている番組を沢山作って大活躍している。人の良さを伸ばす、のは得意と自負している。差別化できる企画が作れる人と、差別化できる企画を変わったパッケージングでコーディネート出来る人、チーム編成が出来る人がテレビ局には必要だという信念があった。自分の経験からも、そういう局員・人材が将来収益を生むと考えていた」
「『生意気言うな』と言われたが、当時の本流番組や組織には馴染まないけれど得意なジャンルを持つ個性的なスタッフを自分の番組に集めて、ゼネラリストではない“クリエイティブディレクター”を育てた。自分と似ていない個性を伸ばした。ドラマで当てているディレクターとか、みな私の後輩。あの当時怒った人は謝ってほしい(笑)」
「風通しを良くするには、達成したい目標に向かってみんなが気持ちが乗っているかどうかを確認したい。その組織やチームが達成すべきKPIにフレッシュさを持たせ、自分たちのやっていることに“意味がある”と思わせることがとても大事。うまく行かなそうな雰囲気が漂ったとき、みなが本気じゃないふりをし始めた時にコミュニケーション不全が起きる、チームリーダーである自分がこのプロジェクトを立ち上げた理由と、自分がどれだけこれを楽しんでいるか、成功を信じているかを、改めて前面に打ち出すべき。常にフレッシュなアイディアとフレッシュな目標を、一個ずつでもいいから持っていたい」
「何を、どの情報を共有すべきかを自分の中で因数分解して言葉をかみ砕いて、分かりやすい短い言葉で目標や意図を伝えたい。10分の話など誰も聞かない。また、注意を引くためにあえて小声で話したり、重要なことほどわざとしどろもどろに話し始めたり……聞いてもらえる間を作ったり、相手に『何?』と思わせてから話を始めること。小手先の技ではあるけれど、1回自分の空気にしないと聞いてもらえないので」
「コミュニケーションとは「相手を見る、聞く」ことだ。相手が置かれている状況や相手の役割をきちんと分かった上で行わないと、一方通行になる。何度も述べてきたように、どんな仕事を誰とするにしても、相手のこと、良さや強みを分かってから始める」
2022年9月27日(火) オンラインにて開催・配信
source : 文藝春秋 メディア事業局