『蒲田行進曲』等で知られる演劇界の鬼才つかこうへい(1948〜2010)の舞台でデビューをした女優・小西真奈美氏が回想する。
つかさんに初めてお会いしたのは、私が19歳の頃、舞台を拝見した直後の楽屋でした。とても柔らかい笑顔で、ワークショップへの参加を提案してくださいました。二度目にお会いしたのは、「人生でこんなにも過酷なことがあるのか……」と思うほどのつかさん新作舞台のワークショップに参加したときでした。朝の10時から毎日10時間程、みっちりダッシュやダンス、殺陣(たて)をやりこみましたが、600人近くの参加者が最終日には数人になりました。この時のつかさんは初めてお会いしたときとは違い、背筋が冷え切って固まるほどの緊張感を纏っていました。
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source : 文藝春秋 2023年1月号