日韓エンタメの格差はなぜか

炎上と分断を超えて

菅野 朋子 ノンフィクションライター
ニュース 社会
菅野朋子氏

 韓国エンタメ界のグローバルパワーが日本で意識され始めたのは2020年だったろうか。

 その年の2月、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が米アカデミー賞で4冠を達成。「非英語圏の映画で初の快挙」と話題をさらった後、春にはコロナ禍の巣ごもり生活の中、動画配信サービスNetflixで公開された韓国ドラマ『愛の不時着』が日本でも大ヒット。夏にはK-POPのボーイズグループ「BTS」が米ビルボードのメインチャートHOT100で1位となった。

 しかし、『パラサイト』が、『愛の不時着』が、BTSが、ある日突然に誕生したわけではない。

 そもそも韓国は市場規模が小さく、海外進出は必然だった。ターニングポイントは、1997年に起きた経済危機によるIMF(国際通貨基金)の介入だ。産業構造の転換を迫られた韓国は主要産業のひとつにIT産業を掲げ、いち早くデジタル社会へ適応する土壌を整えた。海外への進出が生き残る道との認識が広がり、一方、雇用では非正規職が急増するなど、本格的な競争社会に変貌していった。

ホワイトハウスで会見するBTS

 K-POPは中国で人気を得た勢いを力に、アメリカの次に音楽市場規模が大きい日本に進出した。

 K-POPを生み出したのはSMエンタテインメントの李秀満・現総括プロデューサーだ。日本でBoAが人気となった2005年、筆者のインタビューにこう語った。

「日本はエンタメの先進国。水の流れに逆らうわけだから、“モーター”が必要だった」(『週刊東洋経済』同年9月24日号)。“モーター”とは歌、ダンスの実力はもちろん当地の語学まで習得した完璧なアーティストのこと。そうして選ばれたアーティストは熾烈で苛酷な競争を勝ち抜いた者たちだ。

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source : 文藝春秋 2023年2月号

genre : ニュース 社会