ジャーナリストの大西康之さんが、世界で活躍する“破格の経営者たち”を描く人物評伝シリーズ。今月紹介するのは、ラリー・エリソン(Lawrence Joseph Ellison、オラクル会長兼CTO)です
松下幸之助が思索に耽り、現在はパナソニックが保有する真々庵、野村ホールディングスが保有する碧雲荘……。京都市左京区には南禅寺界隈別荘と呼ばれる15邸の広大な別荘がある。2009年、そのうちの一つ「何有(かいう)荘」がオークション会社クリスティーズによってオークションにかけられた。売り出し価格は80億円。文化財とも呼べるこの物件を競り落としたのがこの男、ラリー・エリソンである。
米フォーブス誌が今年3月に発表した世界長者番付では、約6兆8530億円の保有資産を持つフェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグを220億円の「僅差」で上回り、7位に入った。
その天文学的資産の使い道の一つが不動産である。日本だけでなく、世界各地に凄まじい豪邸をいくつも保有しており、2004年にカリフォルニア州ウッドサイドに建てた家は土地だけで2億ドル、建物は桂離宮を真似た日本建築で広大な庭にある池には日本風の太鼓橋がかかっている。2012年にはハワイのラナイ島の土地の98%を購入した。
世間から見れば紛れもなく成功者だが、1990年代に私がカリフォルニア州の本社で会った時には、会長室でエアロバイクを漕ぎながらこう言った。「俺ほどついていない経営者はいない」。
理由を尋ねると、「あいつがいるから、俺は一番になれない」。
あいつとは、マイクロソフト創業者、ビル・ゲイツのことだ。ゲイツの保有資産は10兆円を超え、2018年にアマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾスに抜かれたが、長くフォーブス誌の長者番付で1位に君臨してきた。
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source : 文藝春秋 2019年5月号