評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。
先の6月30日、香港国家安全維持法が施行された。「反政府活動」をした者に無期懲役刑までが科される厳しい法律は自由都市・香港の息の根を止めてしまうのか。
香港は一冊の難解な書だ――。中央政府駐香港連絡弁公室主任を務めた姜恩柱が残した言葉だという。確かにアジアでもあり、ヨーロッパでもあり、一地域でありながら、ひとつの国のようでもある香港は一筋縄ではいかない。倉田徹・張彧暋『香港』(岩波新書)はそんな香港の難解さを読み解こうとする。在香港日本国総領事館勤務後、今は立教大で教える倉田は植民地時代の香港の自由が人権思想に支えられたものというよりも「政府から距離を保」ち、「放置される」なかで育まれたものだという。それは一時の主輸出品だったホンコンフラワー(造花)のように永遠に枯れない確かさを備えていたわけではない。
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source : 文藝春秋 2020年9月号