わが郷里の英雄、西郷隆盛さんは「南洲翁遺訓」でも知られていますが、私は、荘内南洲会が出している『南洲翁遺訓に学ぶ』という本を手元においています。意訳や考えるヒントも書かれていて、作り手の気持ちが伝わってきます。
荘内南洲会は山形県で遺訓の勉強を続けている人たちで、そもそも西郷さんの言葉をこういうかたちで世に出したのも、実は、彼らの先人にあたる庄内藩士たちでした。
戊辰の役は薩長の官軍が勝ちますが、戦さのきっかけの一つが、江戸の警備にあたった庄内藩が三田の薩摩藩邸を焼き払ったことでした。
降伏後、きついお仕置きになるかと思っていたら、下されたのは穏便な沙汰。しかも下座の若い庄内藩主を上座にあげ、「お役のためとはいえ、ご無礼をお許しください」と詫びた。その処置を言い含めたのが西郷さんだと知って感激した庄内藩の家老は若者を鹿児島に送って学ばせ、のちに西郷が賊名を着せられるや、かつて学んだ言葉を本にまとめて全国に配ったそうです。その甲斐あって、賊名は晴れました。
政治のことで悩むと、私はこの教えを読み返しますし、それで救われたことは何回もあります。
最初に遺訓に接したのは、中学の図書室でしょうか。中学を出た私は自動車部品の会社に集団就職し、働きながら夜間高校へ。30歳で補選に出た市議会議員を7期務めた後、参議院に押し上げていただいた。学問に接する期間が短かった分だけ、それを補ってくれる読書は好きでした。より責任が重い国政を担うようになって、より西郷さんの言葉がストンと腹に落ちてきます。
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source : 文藝春秋 2023年5月号