『タコの丸かじり』(文春文庫)東海林さだお
中学生の頃から何度も読み返している本です。
ただし当時、僕にとって読書の主な対象はSF小説でした。誰しもが悩みと迷いに塗れるその年頃、それは未来への夢を抱かせてくれるものであり、同時に人間とは何か、生きるとはどういうことか、というテーマを常に突きつけられるものでもありました。
鬱屈とした日々を送る少年にとって、それはある種の救済でした。自分を取り巻く世界の成り立ちがさっぱり理解できないまま立ちつくす子羊にとって、それは宇宙の真理を知るためのバイブルにも思えたのです。
しかし!
それは重い。何しろ重い。重いテーマを選んで読んでいたので自業自得と言えばそれまでなのですが、ハードなSFに夢中になりながらも、それと真剣に向き合い続けるのはなかなか難儀なものでもあったのです。
そこで僕はとてもいいことを思いつきました。そういうハードな読書の合間に、なるべくくだらない本を読めばいいのではないか、というアイデアです。とにかく何も考えないでいい本、頭を空っぽにできる本、ただただ楽しいだけの本を。
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source : 文藝春秋 2023年5月号