2014年、日本の人口は前年に比べ27万人減少した。2040年以降は、毎年100万人が消えていくだろう。日本の人口は現在、1億2600万人だが、いまの1.42程度の出生率がこのまま続くと、今世紀末には5000万人に縮小する。それは100年前の規模とほぼ等しい。それも、明治時代のように若者が満ち溢れていた国ではなく、高齢化率が40%に達する、世界でもっとも老いた国となる。
しかも、このまま人口が減り続け、生産性も向上しない場合、2040年以降、年平均マイナス0.1%程度の低成長に陥るとの試算もある。
このほど出版された独立系シンクタンク、日本再建イニシアティブの調査・報告書『人口蒸発「5000万人国家」日本の衝撃』(新潮社)は、このように深刻な状態になりつつある日本の人口問題を「日本史上最大の危機」と位置づけている。同報告書は、「緩和」と「適応」の両面から思い切った手を打つことで、最低限8000万人の人口を維持するべきであると主張、海外からの年間15万人の人材の取り込みを含む、多岐にわたる政策提言を行っている。
理屈の上では、人口が減少しても、働き手1人当たりの生産性が高まれば、1人当たりの国民所得を維持できる。そして、働き手1人当たりの生産性を高めることは重要な「適応」戦略でもある。なかでも女性と高齢層の労働参画を促すことが不可欠である。
しかし、人口の規模が余りにも急激に減少する場合、生産性の維持もままならなくなるだろうし、1人当たりの国民所得もジリ貧に陥り、果てはドカ貧に転落する危険が強い。また、仮に、1人当たり国民所得が維持できたとしても、固定費としてカバーする必要がある国防、治安、災害対応などに依拠する安心・安全は一定の規模がないと維持しにくい。
やはり、人口は国力であり国勢なのである。
日本がこのまま急激な人口減少を放置した場合、それは、日本の世界と地域における地位とパワーを低減させていく恐れが強い。
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source : 文藝春秋 2015年9月号