政治生命を賭けた課題を前に支持率低下。この夏、最大の山場を迎えた
「今まで歴代、安全保障に関わる法制に取り組んできた内閣は、必ず支持率を落としています。ある程度支持を削るのは覚悟の上です。我々は支持率のために政治をやっているわけではありません」
7月21日、東京・東新橋の日本テレビスタジオ。BS報道番組に出演した首相・安倍晋三は、笑みを絶やさず、それでも少し苦しそうに語った。安倍は前日20日にはフジテレビの報道番組にも1時間半に亘って生出演している。現役の首相が2日間で計2時間半も、お茶の間に語りかけるのは異例のことだ。
安倍が平和安全法制と呼ぶ安全保障関連法案は16日の衆院本会議で採決された。その後、マスコミは競うように安倍内閣支持率の急落を伝えていた。中でも共同通信社の調査で支持率が前月の47%から10ポイント急落したのは衝撃だった。
「テレビ行脚」は、危機感の表れであるのは言うまでもない。安倍は、両番組に大きな模型やパネルを持ち込み、米国と日本が「隣接した家」という設定で「米国(を模した家)が火事になっても助けにいかないが、日本と隣接する米国の『はなれ』が火事になり、日本に火の粉がかかりそうになった時、日本も助けに行く」という例え話をした。
難解な安全保障の話を、身近な話に例えて説明しようとするのは分かるが、防衛と防犯を同列で扱うような話は、自民党支持者の間でも評判が悪かった。22日の党総務会でも「火事の話は、よく分からなかった」とブーイングが起きた。
政治家は、自分の主張が理解されないと例え話を試みる。ただ、その例えが誤解を受けて、さらに窮地に陥ることも少なくない。元首相の森喜朗、麻生太郎らが、自身の不用意な発言で失速していったことは記憶に新しい。最近、安倍の国会答弁などを聞いていると「いわば」という表現が多いことに気づく。第一次安倍政権の頃、野党議員やマスコミの一部から「安倍は余裕がなくなると言葉に『いわば』が混じる」という指摘が出たことがあるが、その頃の安倍の姿が、よみがえる。
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source : 文藝春秋 2015年9月号