「会社人間」から「コンビニ人間」へ?

日本人へ 第162回

塩野 七生 作家・在イタリア
ニュース 社会 働き方 芥川賞

 前回のコラム、生前退位への陛下の御希望を知っての私の感想を述べたコラムへの若い読者の感想を、まず紹介したい。

「塩野さんの原稿を読んでいると、なぜ日本人は物事をシンプルに(時にはグラデーションをもって)考えることができないのか、と考えさせられます。

 皇室典範改正が難しいなら段階的に、皇室行事に負担が多いなら分散する……といった答えに、なぜ我々は辿り着かないのでしょうか。きっと、ローマから日本を眺める塩野さんは歯がゆいことでしょう。日本にいる私でさえ、歯がゆいのですから……」

 ここまでは私に同意しているこの人だが、問題はここから始まる。

「実は、今回の御原稿で一番眼を引いたのは、われらが世代はなんと、笑っちゃうくらいに責任感が強いのだろう、という一句でした。

 責任感……なんだか、今の若者=われわれ世代(私は三一歳です)の日本人からすると、強い忌避感すら感じる言葉です。今の若者は責任感から逃げている、なんて軽々しく書くと、それには事情があると言われそうですけど(たとえば、責任感を持てるほどの待遇=給料はもらっていない、とか)。天皇陛下に限らず上の世代の方々は、何かを背中に背負って日々歩んでいる気はします。

 責任感――そう、皇室を巡る論議は、実に無責任な議論です。テレビに登場する学者や評論家たちはみな、お題目は立派でも言いたいことを言い合うだけ。これも、現代人の病いでしょうか。

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source : 文藝春秋 2016年11月号

genre : ニュース 社会 働き方 芥川賞