EU(欧州連合)離脱か残留かをめぐる英国の国民投票は、「離脱」と決まった。
世界の株式市場は、売り注文一色となった。それは、世界経済と国際対話を不安定にさせるだろう。
英国の政治と社会に底溜まる澱が一気に沸き立ち、浮上してきた。その澱とは、グローバル・エリートと金融・政治階級とEUへの反発であり、賃金停滞と格差拡大への怒りであり、難民と移民に対する敵意である。
感情の地政学の登場である。民族、宗教、歴史観、彼我の峻別、多様性拒否などのアイデンティティー情念が、政治マグマとして噴出し、国家理性より感情に押し流される対外姿勢を生み出す。傷つきやすく、内向的な地政学である。
どう考えても、英国にとって離脱は理にかなわない。
離脱がどれほど英国の経済に不利かということを、なぜ、あれほど世慣れした英国人が気がつかないのか、不思議と言えば不思議である。
1973年に欧州共同体(EC)に加盟したとき、英国は“欧州の病人”と形容され、惨めな状況だった。その後40年、英国がここまで繁栄した大きな理由は、欧州統合の果実をともに享受できたことが大きい。
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source : 文藝春秋 2016年8月号