ハーグの常設仲裁裁判所(PCA)は、中国が「歴史的権利」として主張する南シナ海の境界線「九段線」には法的根拠がないとの判決を下した。
中でも中国にとって痛いのは、「歴史的権利」が正面から否定されたことであろう。
南シナ海がきな臭くなったのは1930年代である。日本が南シナ海の島を奪取するのではないかとの報道があり、1933年、フランス軍がスプラトリー(南沙)諸島、太平島を占拠し、日本人を退去させ、その2年後、30人のベトナム人をここに移住させた。
フランスは当時、ベトナム(フランス領インドシナ)を植民地支配していた。
この一連の作戦に当たって、フランス政府は、島を占拠したと公表したが、中国政府(国民党政権)は抗議しなかった。中国政府は当時、パラセル(西沙)諸島は中国領と見なしていたが、スプラトリー諸島はそうは見なしていなかったからである。
その後、日本が、日中戦争勃発後、南シナ海に戦力投影した。太平洋戦争開戦後は、香港、マニラ、シンガポールを立て続けに陥落させ、南シナ海での制海権を確立した。
終戦直後の1946年、フランスが機雷掃海艇を南シナ海最大の島である太平島に派遣し、そこにフランスの主権の象徴として標識を立てた。ここは高雄から南に1600キロメートル下ったところに位置する戦略的要地である。それに対して、国民党政権はその年の末、「太平」という名の軍艦にちなんでその島を命名し、石の標識を建てた。
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source : 文藝春秋 2016年9月号