一億総小姑化の時代に思う

藤原 新也 作家
ニュース 社会 サイエンス

 コロナ時代が長引く中、昨今あまり馴染みのない疾病が発生しているが、そのことに関連してあるレポートが頭をよぎる。米デューク大学研究チームが2000年から8年がかりでタンザニアのカセケラチンパンジーの生態を調査した記録である。調査結果では森の餌の豊富な雨季においてチンパンジーはより大きなグループを形成し、餌の少ない乾季では少数グループとなる。そして大集団を形成したチンパンジーは互いの接触が活発になり、腸内細菌叢は多様化し、豊かになる。逆に小集団化したチンパンジーは接触率が低下し、免疫システムの鍛錬を促す腸内細菌叢は脆弱化し、病原菌への抵抗力が低下するとある。

 このレポート結果はコロナ時代を解読する上で示唆に富んでいるように思う。私たちの腸内細菌叢は乾季のチンパンジー同様、いやそれ以上の長い期間、他者との非接触環境の中でおそらく脆弱化しており、免疫機能が低下していると考えられるわけだ。

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source : 文藝春秋 2025年2月号

genre : ニュース 社会 サイエンス