借金先送り、理由なき世襲……あれ、日本って変わってないな
浅田 映画の『大名倒産』、思い切り振り切った楽しい作品でしたよ。ちょんまげ姿の神木(隆之介)くん演じる小四郎の変顔や、「マジで〜!?」なんて叫びが秀逸で。
前田 そう言っていただけてホッとしました。
浅田 前々から思っているのですが、やっぱり映画の極致はコメディですよ。映画に限らず、小説やほかのすべての表現もそう。これはもう、コメディ・フランセーズを設立したフランスの太陽王ルイ14世の時代からね。
前田 遡りますね(笑)。でも、まさに笑いの入った時代劇が作りたかったんです。時代劇に挑戦するのは初めてでしたが、ギリギリの線を狙って遊ぶというか、表現の自由度は意外と大きいと感じました。
前田哲監督がメガホンをとった映画『大名倒産』が6月23日に封切りとなる。原作は浅田次郎氏による同名の時代小説で、2016年から3年半、本誌で連載された。主演は現在、NHK朝ドラ「らんまん」でも主役を務めている人気俳優・神木隆之介だ。
舞台は、260年続いた江戸幕府の泰平も終わろうとする幕末。積もり積もって25万両もの借金を抱える越後・丹生山(にぶやま)藩では、ひとりの男が危機に陥ろうとしていた。名は小四郎。足軽の子として育てられた彼はある日突然、徳川家康の子孫だと告げられ、藩主として迎え入れられる。その裏には小四郎の切腹と引き換えに藩ごと「倒産」させ借金を踏み倒そうとする、先代藩主・一狐斎(佐藤浩市)の計略があった。
実は一狐斎は小四郎の実の父。小四郎は火の車と化した藩の財政を立て直し、切腹を回避できるのか……という物語。
浅田 スケールも壮大で素晴らしかった。
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source : 文藝春秋 2023年7月号