評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。
中高年の関心事といえば肝臓の状態を示すガンマGTPの数値だったが、今やチャットGPTが世界の関心事だ。
平和博『チャットGPTvs.人類』(文春新書)は、何を尋ねても自在に答えてくれる(ように感じられる)、いわゆる「生成AI」技術の最新状況や、その登場に右往左往する社会の様子を臨場感いっぱいに描いている。
騒動を引き起こす原因となったのは生成AIの能力の圧倒的な高さだ。米国の統一司法試験の模擬試験を最新のチャットGPTが上位の成績でクリアしたなど逸話には事欠かない。
しかし、一方で生成AIには欠点もある。たとえば、時にもっともらしい嘘をつく。過去の言語活動を記録した大規模データを学習し、真偽を問わず最もありえる表現を出力する仕組みなので、時々「幻覚」めいたことを語る。
常に正しい解答を出すのなら、もはや機械に任せるところは任せ、人間は機械にできないことをしようと潔く決断できていたかもしれない。だが平然と間違うこともあるとなると、生成AI技術に何を任せるべきか判断に迷う。
こうした悩みの解決にはAIの側だけでなく、人間の側で出来ること、出来ないことの再検討も必要だろう。たとえば暗記はもう止め、分からないことは生成AIに尋ねればいいとはいえない。澤田誠『思い出せない脳』(講談社現代新書)によれば、私たちのとっさの判断や無意識の決断は脳内の記憶に依っている。その人が何者か、何をなすかを定めている記憶とは、その人の人格そのものだとさえいえる。それを外部の機械に委ねるのは「人間やめます」というのと同義で、つまりは出来ない相談なのだ。
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source : 文藝春秋 2023年8月号