私の夢の商店街には、新刊の書店と古書店が存在してほしい──
私が、毎朝、家から仕事場まで四十分ほど歩いて通うという生活を始めて四十年になる。
その間、仕事場は三カ所ほど移ったが、結果としてどこも家から歩いて四十分ほどのところになった。
さほど健康のために気を使うというところのない私が、とりあえず薬やサプリメントの類いをあまり口にせずに暮らしていられる理由のひとつに、日々この距離を歩いて往復しているということがあるのかもしれないと思う。
片道四十分だから、往復一時間二十分。私の歩速は一分間で約百二十五歩なので、これはまったくの偶然ながら、一時間二十分を歩くと一万歩になる。
いまの仕事場は駒沢公園の近くにあるが、以前は小田急線の経堂駅と東急田園都市線の三軒茶屋駅の周辺に仕事場があった。どちらの部屋にも不満はなかったのだが、一カ所は建物の取り壊しのため、もう一カ所は地上げによって転出せざるをえなくなってしまった。
現在の仕事場へは、駒沢公園の、欅の美しい並木道を突っ切って歩いて行くことになるが、それは、どんな季節でも、日々、新鮮な幸福感を味わうことができるということでもある。その意味で、交通の便のよい駅の近くから移ってきたことを後悔はしていない。
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source : 文藝春秋 2023年9月号