著名人が母親との思い出を回顧します。今回の語り手は、加古隆さん(作曲家・ピアニスト)です。
終戦後間もなく生まれた私を長男として、四人の男の子を育て上げた母・房江。
当時は今のように規則に縛られることもほとんど無く、いわゆる育ち盛りの腕白坊主四人が狭い部屋を、あるときは相撲の土俵に、あるときはレスリングのリングにして暴れ回る訳だから、それを取り締まる母の苦労は察して余りある。
また、地道で堅実というより自由奔放に人生を楽しむタイプの父との家庭生活は、否応なしに母を気丈でしっかりとした女性に育て上げたのではないかと思う。
小学校の先生に勧められて始めた私のピアノのお稽古でも、練習より外で皆んなと遊びたい私に、最低限の練習時間を守らせるため目を光らせていた母。練習帳なるものを作り、三十分から一時間なら△、一時間以上なら〇、三十分以下なら×、とつけていた。
ほとんど△と×だったが、お陰でピアノをやめることもなく続けることができたのだ。
将来は音楽家、と漠然と思いながら、家から遠いピアノの先生の所へ長時間かけて通っていたせいか、高校三年の春に肺結核と診断されて療養所に入った私を、どんなにか心配したことだろう。当時はまだ死の影を伴った病だった。
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source : 文藝春秋 2024年2月号