日本の近現代史を訂正していこう

御厨 貴 政治学者
東 浩紀 批評家・作家
ニュース 社会 歴史

世界で進む「記憶の政治」に取り残されるな

 御厨 東さんが最近出版された2冊の新刊は、いずれも「訂正」がキーワードになっていますね。『訂正する力』(朝日新書)は、《日本にいま必要なのは「訂正する力」です》という文章から始まります。正しさばかりが求められがちな現代にあって、この着想は大変面白い。ぜひ今日はいろんな議論をしたいと思って参りました。

  ありがとうございます。今の日本はどの分野も行き詰まっていて、先進国とは言えなくなるほど政治も経済も疲弊しています。でもそこで、「もうダメだ。滅び行くだけだ」と言うべきではない。かといって、すべてをリセットしてゼロから再出発するのも夢想的です。大事なのは安易な現状否定ではなく、一人ひとりが過去を「再解釈」し、現在に生き返らせる柔軟な思想を持つことで、それが「訂正する力」だと考えています。

 御厨 なるほど。

  現在の日本は間違いを認めて方向転換をすることができない風潮に囚われています。政治家や官僚は完璧を目指すあまり、後に見つかった誤りを認めない「無謬(むびゅう)主義」に陥っているし、SNSでは「論破」がもてはやされていて、自説を訂正した瞬間に議論では負けたことになります。歴史認識も同様です。保守もリベラルも互いの主張を突き付け合うばかりでまったく新しい議論をしていない。分断ばかりです。

 御厨 わかります。分断と言えば、安倍晋三元首相の政治がまさしく「分断の政治」でした。皇室の男系男子原理主義とか、集団的自衛権、憲法改正まで、左派との間で摩擦ばかりを生んでいました。

  相手の意見に耳を傾けて、考えを改めようものなら、支持者から「ぶれるな」と批判されてしまうので、どうしても硬直化してしまう。この国で政治的な議論はどうやったら成立させることができるのか、ずっと問題意識を持っていたんです。

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source : 文藝春秋 2024年3月号

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