田辺聖子が好んだ兵庫・神戸 「欧風料理 もん」のコロッケ

作家が愛した名店 第10回

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ゴロッとした神戸牛を楽しむコロッケのこだわりは、創業当初のレシピで作るベシャメルソース。スープに使われる野菜は季節によって異なり、コク深い味わい(もん風コロッケ1,820円、季節のポタージュ880円)

田辺聖子 Ⓒ文藝春秋

〈神戸に住んで私の人生観も文学観も変ったかもしれない〉

『ほっこりぽくぽく上方さんぽ』を引くまでもなく、そこは大阪に生まれ育った田辺の第二の故郷であった。結婚後10年を過ごし、小説の舞台にすることも多かった。ある作品では、大阪から来た青年が「大家族が町になっているみたい」と評する。

 それだけに、すでに伊丹に移って久しい1995年の大震災にはひどく心を痛め、すぐには足を向けられなかったという。

 3年が経ち、再訪が叶った。〈神戸古馴染みという人間のいくところは昔ながらのお店がいい〉と目指したのが、三宮の賑やかな繁華街に立つ「もん」。コロッケとスープを味わった。

 店には今も二代、三代前からの常連が集う。田辺も、さながら“大家族”の賑わいに復興を見出し、胸を撫でおろしたのだろう。

 

1936年創業の店は昨夏、代替わりしたばかり。五代目の日笠公太氏は、「1グラムも無駄のないよう、『肉は金のように扱え』と教えられました」。

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source : 文藝春秋 2024年3月号

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