「相撲界は変わっていくよ」ふたりの人気親方を偲ぶ

大相撲新風録 第38回

エンタメ スポーツ
先代錣山親方(元関脇寺尾) ©時事通信社

 元関脇寺尾の錣山親方が、昨年12月、60歳という若さでこの世を去った。愛弟子らの手で厳かに運び出された出棺時。葬送曲は親方の愛した『千の風になって』。「私のお墓の前で泣かないで。そこにはいない。風になって吹いているから」との主旨の歌詞が胸に刺さり、生前の親方の言葉が蘇る。

 父を師匠とする「井筒三兄弟」は自他ともに認める“マザコン”だった。長兄の元十両鶴嶺山、次兄の元関脇逆鉾、そして三男の寺尾。若くして亡くなった母の墓に、時には夜中に自転車で、三兄弟は毎日のように参っていたという。しかし、この歌を知ってから、「なんだか気持ちが楽になったんですよ」と、常に口ずさんでいたのだった。

 2月3日、四十九日法要が営まれ、納骨された錣山親方。未だ哀しみも癒えないなか、夫人の伊津美さんはいう。

「父と母が眠る墓に、三兄弟も仲良く一緒に入っています。義姉たちと『私たち“未亡人かしまし娘”になっちゃったねぇ』と泣き笑いしてしまいました」

先代高砂親方(元大関朝潮) ©文藝春秋

 そして2月5日には、昨年11月に亡くなった元大関朝潮――先代高砂親方の長岡末弘氏を偲ぶ会が催された。同じ一門で鎬を削った八角理事長(元横綱北勝海)が、涙で声を詰まらせながら弔辞を贈っていたものだ。葬儀は密葬として親族内で済まされていたものの、この偲ぶ会には約350名の弔問客が訪れた。戒名は「大光院潮真弘道居士」。生前、「大ちゃん」の愛称で親しまれた人気大関らしい文字が刻まれていた。

 そして、忘れられない光景がある。密葬のために、長岡氏が自宅からひっそりと出棺された時のことだ。かつて大関として同時代を生きた元若嶋津が、みづえ夫人に付き添われて別れを告げに来たのだ。故・北天佑、琴風、若嶋津、そして朝潮の四大関は、土俵を降りれば家族ぐるみの付き合いをしていたという。脳の病の後遺症で体が不自由な元若嶋津は、朝潮の遺影を見てただ一言、「いい写真だね……」とだけつぶやいていた。

 そして、みづえ夫人は、棺に眠る長岡氏にこう語りかけていた。

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source : 文藝春秋 2024年4月号

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