マルクス経済学を学ぶ意味『近代経済学[新版]』新開陽一・新飯田宏・根岸隆

ベストセラーで読む日本の近現代史 第127回

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官
ニュース 政治 歴史

 評者は大学生や20代、30代のビジネスパーソンから「マルクス経済学を勉強したいので、本を紹介して欲しい」という相談を頻繁に受ける。そのときだいたいこんなやりとりをする。

 ――まず、マルクス経済学とマルクス主義経済学を区別することが重要だ。

「どう違うんですか。マルクス経済学は共産主義イデオロギーに基づいているんじゃないですか」

 ――いまあなたが言った革命のための経済学というのがマルクス主義経済学だ。僕が皆さんに勉強することを勧めているのは、マルクスの『資本論』を基準に資本主義の内在的論理を解明することを追究するマルクス経済学だ。東北大学、東京大学で経済学を教えた宇野弘蔵(1897〜1977)がこの考え方を提唱したことに伴い宇野経済学と呼ばれることもある。マルクス経済学は、歴史主義的で、歴史上に現れた資本主義社会という特殊な社会が、労働力の商品化によって成り立っているという無理を解き明かすことが目的だ。マルクス経済学を学んで資本主義の限界を知ることは、バランスの取れた生き方をする上でも重要と思う。マルクス経済学を真面目に学べば、カネに支配されない価値観が身につく。宇野は『資本論』におけるマルクスの記述に間違いがあれば、訂正すべきと考える。

「どういうところに間違いがあるのですか」

 ――例えば『資本論』と政治的実践を直接的に結びつける態度だ。『資本論』の論理に基づくと労働力の商品化によって成り立つ資本主義システムは、恐慌によるイノベーションを通じて、あたかも永続するかのような強靭なシステムであるという結論が導き出される。ここから革命に繋がる論理を見出すことはできない。

「要するに資本主義を論理によって理解するということですね。社会主義革命を支持する立場に立たなくても『資本論』は理解できると」

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source : 文藝春秋 2024年4月号

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