思えば16年前の平成20年4月、私が知事に就任した頃の熊本県は、財政再建、川辺川ダム問題、水俣病問題などの課題を抱え、まさに逆境のさなかにありました。
1期目の4年間は、逆境に挑戦する日々でした。まず、当時の熊本県の財政状況は、財政調整基金等の貯金が53億円しかないにもかかわらず、借金である通常県債残高は1兆693億円にも上っていました。そこで私は、自らの給料を100万円カットし、県庁の先頭に立って財政再建に取り組みました。その結果、2期8年で借金を1500億円以上削減し、貯金も106億円に倍増することができました。
川辺川ダム問題では、様々な方々の意見に真摯に耳を傾けて熟慮を重ね、平成20年9月に、県議会でダム計画の白紙撤回を表明しました。その時の「民意」は「ダムによらない治水を追求し、今ある球磨川を守っていくこと」にあると受け止めたからです。その時には、85パーセントの県民が私の決断を支持してくれました。もし違った決断を下していれば、私はリコールされたかもしれません。
また、水俣病問題は、私の「政治の原点」です。私は知事就任後、それまで培ってきた人脈をフルに生かし、水俣病特措法の成立に向けて全力を尽くしました。自ら与野党の国会議員に直接交渉し、与野党双方の橋渡し役を務めることで、平成21年7月の特措法成立に結び付けることができました。これにより、熊本県だけでも3万7000人、全国では5万5000人を超える方々が救済されました。
続く2期目は、1期目に種をまいた様々な施策の成果が表れ、「くまモン」の活躍など、多くの「華」が咲き始めました。良き流れの中にあると感じた時期でした。
しかし、3期目が始まった直後の平成28年4月に、熊本地震が発生しました。県政史上最大の大逆境です。私は発災直後から「被災された方々の痛みを最小化する」「単に元あった姿に戻すだけでなく、創造的な復興を目指す」「復旧・復興を熊本の更なる発展につなげる」という復旧・復興の三原則を掲げ、熊本地震からの復旧・復興に全力で取り組みました。
そして、県庁のみならず、県民の総力を結集した「チーム熊本」の力をもって、九州の横軸である中九州横断道路の整備促進など、地震からの創造的復興が進んでいます。
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