団鬼六 なんて酷いことを……

杉本 彩 女優・公益財団法人動物環境・福祉協会Eva代表理事
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官能小説の中でもSMというジャンルを書き続け、大家となった団鬼六(1931〜2011)。中でも昭和37(1962)年に書き始められた代表作『花と蛇』は、いわゆるマニアだけでなく、一般大衆からの反響も大きかった。連載は断続的に昭和50年まで続き、単行本はベストセラーとなる。 

 

女優の杉本彩氏は、その6度目の映画化(石井隆監督・平成16年)に主演。大ヒットを受けて、翌年には続編も作られた。

 映画会社から『花と蛇』への出演を提案されたとき、私にはこの小説がSM文学だという知識しかありませんでした。でも、誘拐された大富豪の妻がハードな調教を受けながらエロスに目覚めていくというストーリーを読んで、「この世界を映像で表現したい女優は私以外にいないだろうし、私ならできる」と確信をもちました。

 団先生と初めてお会いしたのは、撮影に入る前の打ち合わせです。“SM文学の巨匠”という先入観と、“鬼六”というペンネームには近寄りがたいイメージがありますが、実際は真逆で、人間としてキュートな方。本当に女性が好きで、リスペクトして愛していらっしゃるんです。男性だったら誰でもこんなふうに生きたいだろうな、と憧れられる理由がわかりました。

団鬼六 Ⓒ文藝春秋

 自由さにも惹かれました。先生と石井隆監督と私とで記者会見をした際、テレビカメラが回っているのに、携帯が鳴ったら「はい、もしもし」とお出になるので、みんな大爆笑。そこには、団先生だから許される空気が流れていました。

 撮影期間は1か月半ほどでしたが、思っていた以上に肉体的にも精神的にも過酷でした。荒縄で縛られて吊り下げられた跡は痣になるし、神経の感覚が戻ってこないような後遺症もありました。でも私は本当に我慢強くて、痛みにとことん耐え抜く根性があるんです。ドMなんだと実感しましたね(笑)。

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source : 文藝春秋 2025年1月号

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