「働き手1100万人不足」危機をチャンスに変えよう

必要な手を打てば未来は変えられる

古屋 星斗 リクルートワークス研究所主任研究員
ニュース 社会 経済 企業 働き方

 2040年の日本では、1100万人の働き手が不足する――。

 私たちリクルートワークス研究所による報告書「未来予測2040――労働供給制約社会がやってくる」は、その衝撃的な内容ゆえに大きな反響を呼びました。「このまま日本が必要な手を打たなかったら」と仮定してシミュレーションを行った結果、危機的な未来の姿が浮き彫りになったのです。予測では、2030年に約340万人、2040年には約1100万人の働き手が不足します。1100万人といえば、現在の近畿エリアにおける就業者の総数とほぼ同じですから、これがいかに深刻な事態か、おわかりいただけるのではないでしょうか。

 働き手の不足は、運輸、建設、医療、介護など「生活維持サービス」の分野で特に顕著です。既に2024年の時点で、ドライバーが足りずに路線バスが廃止されるなど、実生活への影響が出始めています。今後、こうした事態がさらに増えるでしょう。宅配便が届かない。必要な医療・介護が受けられない。ゴミを収集してもらえない。日頃はあまり意識をしませんが、私たちは誰かの労働に頼らなければ、ゴミひとつ捨てられないのです。

 こうして、「生活が大変すぎて仕事どころではない」人が増加します。すると、人手不足がさらに加速する。結果として生活維持サービスの水準がより下がり、生活で手一杯の人がより増えて、人手不足がより深刻化する。完全な悪循環です。

 では、なぜこれほどまでに働き手が不足してしまうのでしょうか。端的に言えば高齢化が原因です。高齢になれば就業率は徐々に低くなりますし、働き続けるにしても勤務時間は短くなっていきます。つまり、高齢化が進むと社会全体における労働供給が少なくなる。一方で、高齢者が多くなれば医療・介護はじめ対人サービスのニーズはどうしても増大します。つまり労働需要は多くなる。こうして、社会が必要とするだけの労働需要を供給できない「労働供給制約」と呼ぶべき状況が到来するのです。

 これは、過去の人手不足とは根本的に性質が異なります。人口動態に基づく構造的な問題ですから、好不況の波に関係がありません。不況であっても、働き手は不足するわけです。ちなみに、2040年の日本では、11人に1人が85歳以上になると予測されます。人類が過去に経験したことのない、未知の領域です。

 ただ、私たちにはまだ若干の時間の猶予がありますし、できることがあります。さきほど紹介したシミュレーションは、あくまでも「座して待ってしまった」場合のものです。必要な手を打っていけば、未来は変えることができると思います。

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source : ノンフィクション出版 2025年の論点

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