村山由佳「賞が欲しい」作家心理をさらけ出した

日本の顔 インタビュー

エンタメ 読書

ひた隠しに隠してきた“承認欲求”

※村山由佳さんが登場したグラビア「日本の顔」もぜひご覧下さい

 新たな芥川賞、直木賞が決まりましたね。このニュースに接するたび、いまでも22年前の夏、自分が直木賞をいただいた日のことを思い出します。あの頃は自分の書くものに自信があるようでなくて、候補になった時も、正直に告白すると「文藝春秋(以下、文春)から出した本だから下駄を履かせてもらったんじゃないか」くらいに思っていました。「文春で書かないと候補にしてもらえないよ」なんて、言ってくる人がいた時代なんですよ。

 だから、私の小説が選考委員の先生方に選んでもらえたことはものすごく嬉しかったのですが、一方で受賞の連絡を受けた後でも、「自分は作家の擬態がうまいだけの優等生にすぎないのに、まだバレてないのかな、いつバレるかな」って、自信と不安がない交ぜの感情のなかにいたことを覚えています。

 昨年、還暦を迎えた村山由佳さん。2003年『星々の舟』で第129回直木賞を受賞し、その後も『ダブル・ファンタジー』(柴田錬三郎賞、中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞)、『放蕩記』、『風よ あらしよ』(吉川英治文学賞)、『二人キリ』と、常に話題作を刊行し続ける。

 デビュー作から32年目となる今年、「直木賞が欲しい」と切望する女性小説家を描く『PRIZE-プライズ-』を上梓した。

 これまで文春さんでは、「週刊文春」で『ダブル・ファンタジー』『ミルク・アンド・ハニー』と連載させてもらって、女性の性的欲望とか、私自身の結婚、離婚、婚外恋愛までを題材に、赤裸々にさらけ出しながら書いてきました。

 じゃあ次に何を書こうかとなった時、自分の中で「もう性愛は書き尽くしたかな」という思いがあったんです。行為のバリエーションはいくらでも書けるにせよ、官能に留まっている限り、もう一段、深いところには行けないなと。

 これは幼馴染みのいとこと3度目の結婚をして、男女のことを含めた私生活の足もとが安定したことが大きいかもしれません。

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source : 文藝春秋 2025年3月号

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