深刻な汚染が各地で発覚 日本は「PFAS」対策を急げ

日本の水は大丈夫なのか?

諸永 裕司 ジャーナリスト
ニュース 社会 サイエンス

 水も油もはじき、熱に強い。ただし、分解されにくく蓄積されやすい。このため、なかなか消えない。

 それが便利でやっかいな有機フッ素化合物の特徴だ。4700種類以上あるとされ、総称してPFAS(ピーフアス)と呼ばれる。環境やヒトの体内に長く残ることから、「Forever Chemical(永遠の化学物質)」とも呼ばれる。

 焦げつき防止のフライパン、防水スプレー、傘をはじめ、ハンバーガーの包装紙、化粧品やコンタクトレンズ、自動車部品や半導体の製造過程など多彩な用途に使われてきた。いまや「台所から宇宙まで」と言われるほどだ。

画像はイメージです ©Paylessimages/イメージマート

 1950年ごろに使われはじめ、2000年代初めに有害性が明らかになった。

 米ウェストバージニア州では、代表的なPFASのひとつPFOA(ピーフオア)(ペルフルオロオクタン酸)を扱う大手化学メーカー・デュポンの工場が汚染源となった。周辺の住民など7万人を調べた結果、腎臓がん、精巣がん、潰瘍性大腸炎、高コレステロール血症、甲状腺疾患、妊娠高血圧症との関連がわかった。

 その後、アメリカの学術機関「全米アカデミーズ」も腎臓がんと脂質異常症、こどもの成長への影響などを指摘している。ただ「PFAS病」と言われる症状はなく、因果関係の証明は簡単ではない。国内ではPFOS(ピーフオス)(ペルフルオロオクタンスルホン酸)が2010年、PFOAは2013年ごろまでにそれぞれ使われなくなった。だが、ひとたび環境中に出ると土壌や地下水に残り、なかなか消えないため、汚染は一部の飲み水にも広がった。

 飲み水に含まれるPFASについては2020年、国が「PFOSとPFOAの合計で50ナノグラム(1リットル中。以下同)」(1ナノグラムは1グラムの10億分の1)とする暫定目標値を設けた。

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