
虫歯や水虫に悩まされ、体重の40%超の装備・装具を背負い、粗悪な軍靴が使い物にならず草履や裸足で行軍せざるを得なかった――兵士たちの実態を描いた『日本軍兵士』(中公新書)は、21万部超のベストセラーとなった。
「前作は兵士たちの大量死の実態の解明に力点を置きましたが、今回はその歴史的背景を、明治以降の陸海軍の歴史に即して明らかにしたいと考えました。その際、兵站が軽視されていたこと、将校が優遇される半面で下士官・兵士に過重な負担を強いていたこと、兵士たちの衣食住に着目することなどを重視しました」

日中戦争からアジア・太平洋戦争の敗戦までに約230万人もの日本軍兵士が死んだ。その多くは戦死(戦闘による死)ではなく戦病死だったが、この間、一貫して戦病死が増え続けたのではない。
「日清戦争では戦病死者の割合が約89%でしたが、徐々に軍事衛生・軍事医学が改良されていきます。日露戦争では伝染病による死者などが大きく減り、約26%と激減しました。満州事変の頃まで戦病死者の割合は減っていった」
だが日中戦争の長期化で、大量に兵士が投入された。家庭を持つ「中年兵士」の集団では殺伐とした空気が蔓延。知的障害など障害を持つ者も動員された。軍事衛生は退行、減っていた脚気も増加した。
「日本軍は医療・食の改善でそれなりの成果を挙げていたのに、日中戦争でそれが崩れてしまった。アジア・太平洋戦争での陸軍の戦病死者の割合は約38%。日露戦争を上回る数値になったのです」
これまで、戦場の実相に焦点を当てた研究が少なかったのには理由がある。
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